自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

2019-01-01から1年間の記事一覧

第2次分権改革の評価(11)

4 おわりに 第1次分権改革を扱った文献は多数あるのに対し、第2次分権改革を扱った文献はあまり目にすることがない。機関委任事務の廃止のようなドラスティックな事項がなかったこともあるのだろうが、第2次分権改革は評価に値しないと言ったら言い過ぎ…

第2次分権改革の評価(10)

(「(7) 自治体に過剰な手続を課す事項」の続き) 同様の規定は、独立行政法人通則法にも次のとおり規定されている。 (財産的基礎等) 第8条 (略) 2 (略) 3 独立行政法人は、業務の見直し、社会経済情勢の変化その他の事由により、その保有する重要…

バックアップデータは公文書に当たるのか

今回は、今記載しているシリーズを中断して、「桜を見る会」の招待者名簿のバックアップデータが公文書に当たるかどうかについて、いわゆる組織共有文書に該当しないため公文書に当たらないとする政府の見解について批判がなされていることを取り上げること…

第2次分権改革の評価(9)

(7) 自治体に過剰な手続を課す事項 第3次一括法により、地方独立行政法人法(以下「地独法」という。)に次の規定が追加され、地方独立行政法人は、設立団体から出資等を受けた財産が不要となった場合に、設立団体等に返還しなければならないこととされた。…

第2次分権改革の評価(8)

(6) 廃止されている事項 旧介護保険法に基づく施設として指定介護療養型医療施設がある。これは、都道府県知事が指定する介護療養型医療施設である。介護療養型医療施設とは、療養型病床群等を有する病院であって、当該療養型病床群等に入院する要介護者に対…

第2次分権改革の評価(7)

(5) その他省令の規定が不適切なもの 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者支援法」という。)に基づく指定障害福祉サービスの基準は、第2次一括法により条例で定めることが委任された事項である(障害者支援法第43…

第2次分権改革の評価(6)

(4) 制度の施行日が適切と思われないもの 社会福祉制度において契約的な考え方を取り入れているサービスに、基準該当サービスというものがある。例えば介護保険法においては、保険給付の対象となる指定事業者としてのサービスの本来の要件の一部は満たしてい…

分限事由を追加する改正条例について

今回は、現在記載しているシリーズを中断して、話題になっている分限事由を追加する改正条例について取り上げる。 それは、公立小学校で起きた教諭によるいじめ問題で、加害者の教諭4人を有給休暇を取らせ自宅で謹慎させたことについて寄せられた批判を受け…

第2次分権改革の評価(5)

(3) 権限委譲したことが適切と思われないもの いわゆる一括法により条例事項とされたものについては、その移譲先が適切とは思えないもの、例えば都道府県に移譲された事項が本来であれば市町村に移譲されるべきであったのではと思えるものがある*1。 さらに…

第2次分権改革の評価(4)

(2) 法令の表現が適切とは思われないもの 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う国土交通省関係政令等の整備等に関する政令(平成23年政令第363号)。以下「整備政令」という。)」に…

第2次分権改革の評価(3)

3 条例に委任された事項について (1) 些末な事項 第2次分権改革における条例への委任は、重要な事項についてはなされず、些末な事項であったという評価をよく耳にするが、当時も原課の職員からそうした声を聞くことはあった。例えば、医療法では病院の従業…

第2次分権改革の評価(2)

2 第2次分権改革の内容 第2次分権改革において自治体の条例制定に特に関係する事項は、施設・公物の設置管理基準に係る義務付け・枠付けの見直しである。これに対する自治体の対応方法として、地方分権改革推進委員会は、当初は国の法令の上書き(書き換…

第2次分権改革の評価(1)

最近、学者等による第2次地方分権改革の評価を耳にすることがあるが、それは、条例事項とされた項目は些末なものであり、その意義は限定的なものであるというのが一般的のようである。 旧ブログにおいて、特に個別の事項を取り上げて感想を記載しているが、…

条例の分類(下)

2 法律との関係による分類 条例について考える場合、法律との関係を抜きにすることはできない。第一次地方分権前は、公共事務条例、委任事務条例、行政事務条例の3つに分類することが一般的であった(例えば秋田周『条例と規則』P88~)。第一次地方分権後…

条例の分類(上)

1 条例の内容による分類 条例の分類は、例規集においては他の規則等の例規とともに行政分野別になされているのが通例である。例えば兼子仁ほか『政策法務辞典』(P110~)では、まちづくり、福祉、安全・安心、地域環境、地域経済、人権・コンプライアンス…

「同一の行為」

私は、次の地方自治法第92条の2の規定に一読しただけでは意味がよく分からない部分がある。 (議員の兼業禁止) 第92条の2 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限…

県民投票条例(その2)

2019年2月24日に沖縄県で行われた県民投票については、2019年1月25日付け記事「県民投票条例」で取り上げたが、憲法論者による沖縄県の行為を正当化して国の対応を批判する「地方政治におけるレファレンダム~沖縄県民投票の結果を受けて」*1という論文に…

号に複数の事項を規定する場合の柱書きの表記

次の規定は、「船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成30年法律第61号)」第14条の規定である。 (死亡等による許可の失効) 第14条 前条第5項の規定によるほか、再資源化解体業者が次の各号のいずれかに該当することとなった場合においては、第…

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて(下)

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて、少なくとも私の周囲では、それが適当でないという意見を言う人は少なく、むしろ規定すべきだと言う人が多い。市町村の職員からも、「都道府県の条例で規定してもらったほうが、事務をやりやすい」という…

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて(上)

1999年の地方分権改革により、都道府県条例に市町村の責務を規定することは否定的な意見が多い反面、それを明確に否定する規定がないため、当該規定が存置されたほか、新たに規定する例も見られるところである。 最近は、その問題に対する意識が薄れているよ…

職務専念義務

公用メールで送別会の案内、大阪府が職員処分へ 6月に退職した大阪府幹部の送別会について、職員が公用メールで案内状を送っていたことがわかった。同僚から集めた記念品の代金保管も職場でしていた。いずれも内規違反として、府は近く関係者を処分する。 …

他の自治体の区域を含む協定の当該区域への適用の可否~大阪高裁平成29年7月12日判決

大阪高裁平成29年7月12日判決は、X市が、X市に隣接するA市内の土地及びX市内の土地に跨って所在する車両基地を操業するY社と締結した、同基地の操業に関し地下水の汲上げを行わないことを内容とする環境保全協定が、A市内の土地の区域についても適用…

時間外勤務の上限時間の規定

平成31年2月、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇。以下「人事院規則」という。)に次の規定を追加する改正が行われ、平成31年4月1日から施行された。 (超過勤務を命ずる時間及び月数の上限) 第16条の2の2 各省各庁の長は、職員に超過勤…

審議会の報告書を受け取らないことについて

自治体の附属機関に相当する国の機関は、いわゆる八条機関と言われている審議会等であるが、令和元年6月3日に公表された金融審議会(以下「審議会」という。)の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を麻生金融担当大臣が受…

附属機関(10)

(5) まとめ 私的諮問機関について、その設置自体は違法としても、損害賠償請求等について認めた判例は、高裁レベルでは、平成21年6月4日広島高裁判決に見られる程度である。 損害賠償請求等を認めない理由としては、平成25年11月7日大阪高裁判決及び平成2…

附属機関(9)

(4) 協議会 近時の法令では、協議会という名称の会議体が多く存している。平成27年6月25日大阪高裁判決で対象とされているものの中にも協議会という名称を付したものがある。 法定の協議会について、北村喜宣教授は、「空家等対策の推進に関する特別措置法…

附属機関(8)

(2) 臨時的・一時的なもの 要綱設置の私的諮問機関について裁判所により厳しい判断がなされている中で、条例によらない会議体的なものが認められる場合はあるのか、触れてみることとしたい。 学説では、臨時的・一時的なものであれば要綱設置でもよいという…

附属機関(7)

8 私的諮問機関に関する判例 (1) 概要 近年、住民訴訟において、要綱等で設置するいわゆる私的諮問機関が条例で設置しなければならない附属機関であるとして違法とする判決が下級審で出されている。 その主なものを一覧にすると、次のとおりである。 区分 …

附属機関(6)

(2) 私的諮問機関に関する要綱例 私的諮問機関に関する要綱を作成しようとするときに、附属機関に関する設置条例を参考にしてしまうこともあるかと思うが、それは合議制の機関であることを前提とした条例であることから、当然適切でないことになる。 私的諮…

省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(下)

(2) 改正部分の表記に従来のように傍線のみを用いて新旧対照表を作成する方式 ア (1)に準じた改正文を用いる方式 この方式は、農林水産省令及び復興庁令で用いられており、その改正文は、次のとおりである。 家畜改良増殖法施行規則の一部を改正する省令(平…