自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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第2次分権改革の評価(7)

 (5) その他省令の規定が不適切なもの

 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者支援法」という。)に基づく指定障害福祉サービスの基準は、第2次一括法により条例で定めることが委任された事項である(障害者支援法第43条第1項及び第2項)。

 その障害福祉サービスについて、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成24年法律第51号)」により、共同生活介護(ケアホーム)が共同生活援助(グループホーム)に一元化され、この改正を受けて条例を定めるに当たって基準とされる省令も平成25年厚生労働省令第124号により改正されたが、その改正省令には、次のような経過規定が置かれている。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準の一部改正に伴う経過措置)

第3条 この省令の施行の際現に第三条の規定による改正前の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(以下「旧指定障害福祉サービス基準」という。)第137条に規定する指定共同生活介護の事業を行う事業所並びに旧指定障害福祉サービス基準第217条に規定する指定共同生活介護の事業等を行う一体型指定共同生活介護事業所及び一体型指定共同生活援助事業所については、第3条の規定による改正後の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(以下「新指定障害福祉サービス基準」という。)第207条に規定する指定共同生活援助の事業を行う事業所とみなす。

2 この省令の施行の際現に旧指定障害福祉サービス基準第207条に規定する指定共同生活援助の事業を行う事業所(次条において「旧指定共同生活援助事業所」という。)は、新指定障害福祉サービス基準第213条の2に規定する外部サービス利用型指定共同生活援助の事業を行う事業所(第5条において「外部サービス利用型指定共同生活援助事業所」という。)とみなす。

 この経過規定は、従来の指定共同生活介護事業所を指定共同生活援助(介護サービス包括型)事業所と、指定共同生活援助事業所を外部サービス利用型指定共同生活援助事業所とみなすことなどを規定するものである。

 では、自治体において、この規定によってそのまま条例で基準を定めることができるかというと、疑問がなくはない。条例委任の根拠となっている障害者支援法の規定は、次のとおりである。

(指定障害福祉サービスの事業の基準)

第43条  指定障害福祉サービス事業者は、当該指定に係るサービス事業所ごとに、都道府県の条例で定める基準に従い、当該指定障害福祉サービスに従事する従業者を有しなければならない。

2 指定障害福祉サービス事業者は、都道府県の条例で定める指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従い、指定障害福祉サービスを提供しなければならない。

3・4 (略)

 条例に委任されている事項は、事業所ごとの従業者と事業の設備及び運営の基準であって、事業所の基準が委任されているわけではない。言わんとしていることは分かるのだが、法を受けた基準の書き方としては如何かと感じる。