自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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第2次分権改革の評価(8)

 (6) 廃止されている事項

 旧介護保険法に基づく施設として指定介護療養型医療施設がある。これは、都道府県知事が指定する介護療養型医療施設である。介護療養型医療施設とは、療養型病床群等を有する病院であって、当該療養型病床群等に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設であり、いわば医療施設と介護老人保健施設の中間施設的なものである。

 介護療養型医療施設は、医療の必要度に応じた機能分担を図るため、療養病床を再編成するという考え方から、介護施設等に転換することとして、「健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)」で平成24年3月31日をもって廃止することとされた。しかし、その転換がスムーズに行われなかったため、「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)」で、平成18年法律第83号の附則に次のような規定が追加され、当時は、平成30年3月31日まで存続することとされていた*1

(健康保険法等の一部改正に伴う経過措置)

第130条の2 第26条の規定の施行の際現に同条の規定による改正前の介護保険法(以下この条において「旧介護保険法」という。)第48条第1項第3号の指定を受けている旧介護保険法第8条第26項に規定する介護療養型医療施設については、第5条の規定による改正前の健康保険法の規定、第9条の規定による改正前の高齢者の医療の確保に関する法律の規定、第14条の規定による改正前の国民健康保険法の規定、第20条の規定による改正前の船員保険法の規定、旧介護保険法の規定、附則第58条の規定による改正前の国家公務員共済組合法の規定、附則第67条の規定による改正前の地方公務員等共済組合法の規定、附則第90条の規定による改正前の船員職業安定法の規定、附則第91条の規定による改正前の生活保護法の規定、附則第96条の規定による改正前の船員の雇用の促進に関する特別措置法の規定、附則第111条の規定による改正前の高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律の規定及び附則第111条の2の規定による改正前の道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)は、平成30年3月31日までの間、なおその効力を有する。

2 前項の規定によりなおその効力を有するものとされた旧介護保険法第48条第1項第3号の規定により平成30年3月31日までに行われた指定介護療養施設サービスに係る保険給付については、同日後も、なお従前の例による。

3 第26条の規定の施行の日前にされた旧介護保険法第107条第1項の指定の申請であって、第26条の規定の施行の際、指定をするかどうかの処分がなされていないものについての当該処分については、なお従前の例による。この場合において、同条の規定の施行の日以後に旧介護保険法第8条第26項に規定する介護療養型医療施設について旧介護保険法第48条第1項第3号の指定があったときは、第1項の介護療養型医療施設とみなして、同項の規定によりなおその効力を有するものとされた規定を適用する。

 指定介護療養型医療施設の設備・運営の基準は、第一次一括法の附則第35条で旧介護保険法を改正して条例委任され、その附則第36条で1年間の経過措置が置かれている。

 これに関わる省令の基準は、50条にもなる。廃止することが予定されている施設に関して、普通に条例を定めようとすると同じだけの規定を置かなければいけないことになる。これを意味のあることと考えるべきなのであろうか。

 ちなみに、私が一括法に関する条例制定に携わったときは、いわゆるリンク方式は採らなかったが、この指定介護療養型医療施設の設備・運営の基準についてのみリンク方式によった。

*1:その後、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)第3条の規定により改正され、平成36年(令和6年)3月31日まで存続することとされた。