自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

条例

虐待禁止条例改正条例案

留守番禁止条例などと称され世間をにぎわした埼玉県虐待禁止条例の一部改正条例案は、結局撤回することで決着した。 この改正条例案が議員提出であったため、SNS上では、議会事務局における条例審査についても盛り上がっていた。言うまでもなく、議会事務局…

市長の在任期間に関する条例

米沢市長選 伊藤夢人氏が出馬表明 来年12月の任期満了に伴い行われる米沢市長選挙に、市の参与を務める伊藤夢人(いとう・ゆめと)さんが、きのう(18日)、出馬を表明しました。 (中略) なお、現職の中川勝(なかがわ・まさる)市長は、自身の任期を2期…

議長の報酬を減額する条例

“職にとどまる議長” 報酬を減額する条例案可決 東京 墨田区 (略) 墨田区議会の木内清議長は、去年5月に議長に就任しましたが、区議会の慣例として長年、踏襲されてきた原則1年を過ぎたあとも議長の職にとどまっています。 区議会では、ことし6月に不信…

議員報酬削減条例

長期欠席都議、報酬減額条例を提案 都民ファーストの会は29日、東京都議会の長期欠席議員を対象とした報酬の削減条例案について、立憲民主党と共同で議会運営委員会理事会に提案したと発表した。木下富美子都議が無免許運転で当て逃げ事故を起こして書類送検…

真剣な交際以外を処罰?~青少年健全育成条例の改正

大阪府が検討している青少年健全育成条例の改正が話題になっている。大阪府が1月15日まで行っていた意見募集の資料によると、次の改正を予定している。 <現行規定> 第39条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。 (2) 専ら性的欲望を満足させる目的…

第2次分権改革の評価(11)

4 おわりに 第1次分権改革を扱った文献は多数あるのに対し、第2次分権改革を扱った文献はあまり目にすることがない。機関委任事務の廃止のようなドラスティックな事項がなかったこともあるのだろうが、第2次分権改革は評価に値しないと言ったら言い過ぎ…

第2次分権改革の評価(10)

(「(7) 自治体に過剰な手続を課す事項」の続き) 同様の規定は、独立行政法人通則法にも次のとおり規定されている。 (財産的基礎等) 第8条 (略) 2 (略) 3 独立行政法人は、業務の見直し、社会経済情勢の変化その他の事由により、その保有する重要…

第2次分権改革の評価(9)

(7) 自治体に過剰な手続を課す事項 第3次一括法により、地方独立行政法人法(以下「地独法」という。)に次の規定が追加され、地方独立行政法人は、設立団体から出資等を受けた財産が不要となった場合に、設立団体等に返還しなければならないこととされた。…

第2次分権改革の評価(8)

(6) 廃止されている事項 旧介護保険法に基づく施設として指定介護療養型医療施設がある。これは、都道府県知事が指定する介護療養型医療施設である。介護療養型医療施設とは、療養型病床群等を有する病院であって、当該療養型病床群等に入院する要介護者に対…

第2次分権改革の評価(7)

(5) その他省令の規定が不適切なもの 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者支援法」という。)に基づく指定障害福祉サービスの基準は、第2次一括法により条例で定めることが委任された事項である(障害者支援法第43…

第2次分権改革の評価(6)

(4) 制度の施行日が適切と思われないもの 社会福祉制度において契約的な考え方を取り入れているサービスに、基準該当サービスというものがある。例えば介護保険法においては、保険給付の対象となる指定事業者としてのサービスの本来の要件の一部は満たしてい…

分限事由を追加する改正条例について

今回は、現在記載しているシリーズを中断して、話題になっている分限事由を追加する改正条例について取り上げる。 それは、公立小学校で起きた教諭によるいじめ問題で、加害者の教諭4人を有給休暇を取らせ自宅で謹慎させたことについて寄せられた批判を受け…

第2次分権改革の評価(5)

(3) 権限委譲したことが適切と思われないもの いわゆる一括法により条例事項とされたものについては、その移譲先が適切とは思えないもの、例えば都道府県に移譲された事項が本来であれば市町村に移譲されるべきであったのではと思えるものがある*1。 さらに…

第2次分権改革の評価(4)

(2) 法令の表現が適切とは思われないもの 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う国土交通省関係政令等の整備等に関する政令(平成23年政令第363号)。以下「整備政令」という。)」に…

第2次分権改革の評価(3)

3 条例に委任された事項について (1) 些末な事項 第2次分権改革における条例への委任は、重要な事項についてはなされず、些末な事項であったという評価をよく耳にするが、当時も原課の職員からそうした声を聞くことはあった。例えば、医療法では病院の従業…

第2次分権改革の評価(2)

2 第2次分権改革の内容 第2次分権改革において自治体の条例制定に特に関係する事項は、施設・公物の設置管理基準に係る義務付け・枠付けの見直しである。これに対する自治体の対応方法として、地方分権改革推進委員会は、当初は国の法令の上書き(書き換…

第2次分権改革の評価(1)

最近、学者等による第2次地方分権改革の評価を耳にすることがあるが、それは、条例事項とされた項目は些末なものであり、その意義は限定的なものであるというのが一般的のようである。 旧ブログにおいて、特に個別の事項を取り上げて感想を記載しているが、…

県民投票条例(その2)

2019年2月24日に沖縄県で行われた県民投票については、2019年1月25日付け記事「県民投票条例」で取り上げたが、憲法論者による沖縄県の行為を正当化して国の対応を批判する「地方政治におけるレファレンダム~沖縄県民投票の結果を受けて」*1という論文に…

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて(下)

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて、少なくとも私の周囲では、それが適当でないという意見を言う人は少なく、むしろ規定すべきだと言う人が多い。市町村の職員からも、「都道府県の条例で規定してもらったほうが、事務をやりやすい」という…

都道府県条例に市町村の責務を規定することについて(上)

1999年の地方分権改革により、都道府県条例に市町村の責務を規定することは否定的な意見が多い反面、それを明確に否定する規定がないため、当該規定が存置されたほか、新たに規定する例も見られるところである。 最近は、その問題に対する意識が薄れているよ…

附属機関(10)

(5) まとめ 私的諮問機関について、その設置自体は違法としても、損害賠償請求等について認めた判例は、高裁レベルでは、平成21年6月4日広島高裁判決に見られる程度である。 損害賠償請求等を認めない理由としては、平成25年11月7日大阪高裁判決及び平成2…

附属機関(9)

(4) 協議会 近時の法令では、協議会という名称の会議体が多く存している。平成27年6月25日大阪高裁判決で対象とされているものの中にも協議会という名称を付したものがある。 法定の協議会について、北村喜宣教授は、「空家等対策の推進に関する特別措置法…

附属機関(8)

(2) 臨時的・一時的なもの 要綱設置の私的諮問機関について裁判所により厳しい判断がなされている中で、条例によらない会議体的なものが認められる場合はあるのか、触れてみることとしたい。 学説では、臨時的・一時的なものであれば要綱設置でもよいという…

附属機関(7)

8 私的諮問機関に関する判例 (1) 概要 近年、住民訴訟において、要綱等で設置するいわゆる私的諮問機関が条例で設置しなければならない附属機関であるとして違法とする判決が下級審で出されている。 その主なものを一覧にすると、次のとおりである。 区分 …

附属機関(6)

(2) 私的諮問機関に関する要綱例 私的諮問機関に関する要綱を作成しようとするときに、附属機関に関する設置条例を参考にしてしまうこともあるかと思うが、それは合議制の機関であることを前提とした条例であることから、当然適切でないことになる。 私的諮…

附属機関(5)

7 いわゆる私的諮問機関について (1) 附属機関と私的諮問機関との違い 要綱等によりいわゆる私的諮問機関*1が設置されることがあるが、これと附属機関との違いが不明確な面がある。 附属機関と私的諮問機関の形式的な違いは、委員へ支払う報酬の科目が違う…

附属機関(4)

6 附属機関であるか検討を要する機関 (1) 協議会 近年、利害調整等の手法として、法律で「協議会」という名称の機関を設置することが定められることが多くなっている(大橋洋一「道路建設と史跡保護―協議会の機能に関する一考察」『行政法研究第16号』参照…

附属機関(3)

4 自ら自治体の意思を決定・表示する附属機関の設置の可否 自治体の附属機関は諮問機関であるべきで、自ら自治体の意思を決定・表示する附属機関は設置できないという見解があり、むしろ一般的な解釈であるように思われる*1。 法定の附属機関の中には、例え…

附属機関(2)

3 附属機関の設置が条例事項とされていることについて 審議会等の附属機関の設置は、地方自治法第138条の4第3項の規定により条例事項とされている。これに対し、国の審議会等は、かつては全て法律で設置することとされていたのだが、昭和58年の国家行政組…

附属機関(1)

今回から10回にわたり、附属機関について取り上げる。旧ブログでは、「自治体の組織」という記事の中で、特に附属機関が条例事項とされている意義を取り上げたが、近年は、要綱設置の会議体が条例設置の附属機関とすべきとして違法とする下級審判決が出され…