「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするものにつき、手数料を徴収することができる」こととされている(自治法227条)。この「普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするもの」とは、当然、法令のほか自治体の条例・規則等に基づく事務を想定しているものと思われる*1。そして、手数料に関する事項は、条例事項とされている(自治法228条1項)。
これに対し、資料のコピー代等、条例に基づかないいわゆる「実費徴収」というものがある。これは、私法上の契約関係により実費経費を徴収するものとされているが、この実費徴収と手数料は相反するものではなく、例えば図書館の図書、記録その他の資料の複写に係る経費について、手数料として徴収しても、実費徴収として徴収してもよいこととされている*2。
「実費徴収」をすることができる経費について情報公開条例に基づく行政文書の開示による費用について考えてみる。これは、開示決定に要した費用(処理に要した人件費が主になると思われる)と、コピー代や記録媒体の費用等の開示に伴って付随的に生じる費用(コピー等に要した人件費相当分も含めてよいだろう)に区分することができる。そして、前者については条例で手数料という形で徴収する必要があるが、後者については、条例に規定することなく、実費徴収という形で徴収することが可能とする見解が実務で一般的に採られている見解であろう*3*4。
以上により、「実費徴収」として徴収することが可能な経費は、法令等に根拠を要しないサービスに係る経費は当然として、法令等の規定を前提とするものであっても、あくまでもそれに付随して必要になる物に伴って生じる経費であると言えるのではないだろうか。
*1:「事務の性質が、それを利用するかどうかを利用者の自由な意思に委ねているものである場合は、その手数料の徴収については、必ずしも法令に根拠のあることを要しない(林修三『例解立法技術』(P319)」とされているが、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく行政文書の開示請求に係る手数料(同法16条)のように、法令に基づく事務について徴収する手数料は、法令で明記することが多いのではないかと思われる。
*2:実務地方自治研究会『Q&A実務地方自治法』P3158~
*3:実費徴収という形を採る団体であっても、徴収する根拠は「費用負担」といった見出しで条例で規定を置く団体が多く、中には金額を規則で具体的に定めている団体もある。
*4:もちろん、コピー代や記録媒体の費用等の実費分のみを手数料という形で徴収することも可能である。