自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

2023-01-01から1年間の記事一覧

施策推進条例における「総合的」の意義

基本条例に代表される施策推進条例においては、目的規定において、対象とする施策を総合的・計画的に進めることとし、責務規定において、その施策を行う主体に、当該施策を総合的に推進する義務を課すこととすることが多い*1。 施策を計画的に進めるのであれ…

「附則」とあえて表記している例

天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号) 附 則 (施行期日) 第1条 この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第1条並びに次項、次条、附則第8条及び附則第9条の規定は公布…

立入検査時の身分証明書の提示

法令における立入検査の規定においては、立入検査を行う職員は身分証明書を携帯しなければならないこととする規定を置くことが通例であるが、その書きぶりは、次のとおり、関係人の請求に応じて提示すべきこととするものと、関係人の請求がなくても提示を義…

虐待禁止条例改正条例案

留守番禁止条例などと称され世間をにぎわした埼玉県虐待禁止条例の一部改正条例案は、結局撤回することで決着した。 この改正条例案が議員提出であったため、SNS上では、議会事務局における条例審査についても盛り上がっていた。言うまでもなく、議会事務局…

「直ちに」~道路交通法に基づく救護義務違反が問われた事例

ひき逃げで逆転無罪=長野の15歳死亡事故―東京高裁 長野県佐久市で2015年、横断歩道を渡っていた中学3年の男子生徒=当時(15)=をはねて死亡させる事故を起こした際、直ちに救護しなかったとして道交法違反(ひき逃げ)罪に問われた男性被告(50)の控…

地方自治法の規定修正案(8)~第3編第3章

○第285条 市町村及び特別区の事務に関し相互に関連するものを共同処理するための市町村及び特別区の一部事務組合については、市町村又は特別区の共同処理しようとする事務が他の市町村又は特別区の共同処理しようとする事務と同一の種類のものでない場合にお…

地方自治法の規定修正案(7)~第2編第9章

○第210条 一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。 「一会計年度における一切の」は不要だと思う。納まりが悪いのであれば、「収入及び支出は、全て当該会計年度の歳入歳出予算に……」とすればいい。 ○…

基礎から分かる!自治体の例規審査

この度、「基礎から分かる!自治体の例規審査」を上梓させていただきました。 昨年5月頃、法制執務について、立案という視点ではなく、審査という視点で記載した書籍を企画したいとのお話があり、7月に正式に依頼を受け執筆させていただきました。 執筆に…

教育委員会の事務の首長への移管

「まる三重リポート」三重県の文化振興条例案 法令への認識の甘さ露呈 条文が法に抵触する可能性が浮上している県の文化振興条例案。23日の三重県議会環境生活農林水産常任委員会(山崎博委員長、8人)は「法律上の整理が不透明」として、条例案を事実上の…

法律レベルにおける新旧対照表方式の検討

元内閣法制局長官である山本庸幸氏は、内閣法制次長時代(2010年(平成22年)1月~2011年(平成23年)12月)のエピソードとして、例規の改正手法である新旧対照表方式について、ブログで次のように述べている。 ……改め文そのものは実に分かりにくいし、最初…

許可制が許容される基準

今頃何を言っているのだという感じがするだろうが、職業について許可制を用いることが許容される基準として、薬事法距離制限違憲判決(最高裁判所昭和50年4月30日大法廷判決)*1が次のように判断している。 職業の許可制は、法定の条件をみたし、許可を与え…

地方自治法の規定修正案(6)~第2編第8章

○第203条の2第1項 普通地方公共団体は、その委員会の非常勤の委員、非常勤の監査委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、監査専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会…

地方自治法の規定修正案(5)~第2編第7章②

○第177条第1項 「普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。」 →「……、理由を示して再議に付…

地方自治法の規定修正案(4)~第2編第7章①

○第142条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこ…

憲法に自衛隊を位置付ける規定

ある憲法学者が、憲法に自衛隊を位置付ける規定として、第72条*1に第2項として次の規定を設けることを提案しているのを目にした。 内閣総理大臣は、法律に基づいて設置される自衛隊を内閣を代表して指揮監督する。 もちろん、こうした規定を設けることの適…

遡及適用した場合における立法上の手当て

令和2年4月から令和3年9月の間、岩手県大槌町において議会が議決した条例46件と町長が決裁した規則36件を公布していなかったことについて、『自治体法務雑記帳』(「立法の過誤と遡及立法―大槌町条例未公布問題に寄せて」)において、詳細な検討がなされ…

地方自治法の規定修正案(3)~第2編第6章

○第90条第2項 前項の規定による議員の定数の変更は、一般選挙の場合でなければ、これを行うことができない。 この規定の意味は、議員の定数を変更した場合には、その適用は次の一般選挙からであるということである(松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改…

「とる」か「採る」か

次の一部改正法令は、いずれも令和4年12月16日に公布されたものである。 民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号) (児童福祉法の一部改正) 第2条 児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部を次のように改正する。 第33条の2第2項中「 、教…

地方自治法の規定修正案(2)~第2編第5章

○第74条第1項・第5項 「選挙権を有する者」の略称は、第5項で置く方が適当。したがって、第1項の「(以下この編において「選挙権を有する者」という。)」は削り、第5項の「第1項の選挙権を有する者」→「第1項の選挙権を有する者(以下この編において…