自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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「とる」か「採る」か

 次の一部改正法令は、いずれも令和4年12月16日に公布されたものである。

   民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号)

 (児童福祉法の一部改正)

第2条 児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部を次のように改正する。

 第33条の2第2項中「 、教育及び懲戒」を「及び教育」に、「採る」を「とる」に改め、同項ただし書を削り、同項に後段として次のように加える。

  (後段略)

 

   障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第104号)

 (精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)

第7条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)の一部を次のように改正する。

 (略)

 第29条の2第2項中「措置をとつた」を「規定による入院措置を採つた」に、「すみやかに」を「速やかに」に、「とる」を「採る」に改め、同条第4項中「措置」を「入院措置」に改める。

 上記の法律による改正後のそれぞれの規定は、次のとおりである。

   児童福祉法

第33条の2 (略)

② 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。この場合において、児童相談所長は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。

③・④ (略)

 

   精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

第29条の2 (略)

2 都道府県知事は、前項規定による入院措置を採つたときは、速やかに、その者につき、前条第1項の規定による入院措置を採るかどうかを決定しなければならない。

3・4 (略)

 本来、「とる」と「採る」のどちらを用いるべきかについては、ぎょうせい公用文研究会『最新公用文用字用語例集(増補版)』(P173)に「採る」の例示として「必要な措置を採る」とあるため、原則的には「採る」でよさそうである。

 しかし、磯崎陽輔『分かりやすい法律・条例の書き方(改訂版(増補2))』(P279)によると、「選択する」という意味で用いる場合は「採る」、「実行する」という意味で用いる場合は「執る」であり、「いずれか判断できない場合に「する」とするのだが、この判別は難しいので、通常は「措置を講ずる」とするとしている。