(「(6) 改正規定の特定の簡略化」の続き)
考えられるのは、条を引用する場合に「第〇条から第〇条まで」とするように、「…から…まで」といった引用ができないかである。「…から…までの改正規定」とした事例として、次のものがある。
地方税法等の一部を改正する法律(平成18年法律第7号)
附 則
(施行期日)
第1条 この法律は、平成18年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(1) 第1条中地方税法第700条の22の3の改正規定並びに同法附則第15条第28項から第30項までの改正規定及び同条に3項を加える改正規定(同条第57項に係る部分に限る。)並びに附則第13条第23項及び第24項の規定 平成18年6月1日
(2)・(3) (略)
平成18年法律第7号附則第1条の下線部の改正規定は、次のとおりである。
附則第15条中……、同条第28項中……に改め、同項を同条第24項とし、同条第29項中……に改め、同項を同条第25項とし、同条第30項中……を削り、同項を同条第26項とし、……
この事例では、項の移動も当該項の改正規定に含めているが、令和3年法律第7号第5条の下線部は、「第〇項の改正規定」では網羅し切れない部分もあるので、あえてこの事例に倣うのであれば、次のようにでもすることになるのだろう。
同条第6項を同条第4項とする改正規定、同条第7項から同条第16項の改正規定及び同項を同条第28項とし、同項の前に1項を加える改正規定を次のように改める。
ただし、平成18年法律第7号の事例は、項を追加するために項を跨いで改正をしているため、このようにすると分かりにくい面がある。
むしろ、この事例では「同条第6項を同条第4項とする改正規定から同条第16項を同条第28項とし、同項の前に1項を加える改正規定までを次のように改める」とし、「……改正規定から……改正規定まで」というように引用した方が分かりやすいと思うが、このようにした法律の例は見つけることができなかった。
唯一見つけることができたのは、第156回国会において衆第2号として提案された次の法律案である*1。
健康保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案
健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)の一部を次のように改正する。
(略)
附則第51条中地方公務員等共済組合法第59条第3項から第6項までを削る改正規定から同条第13項を同条第9項とする改正規定までを次のように改める。
この平成14年法律第102号附則第51条の下線部の改正規定は、次のとおりである。
第59条第3項から第6項までを削り、同条第7項中……に改め、同項を同条第3項とし、同条第8項を同条第4項とし、同条第9項を同条第5項とし、同条第10項を同条第6項とし、同条第11項中……に改め、同項を同条第7項とし、同条第12項中「から第六項まで」を削り、同項を同条第8項とし、同条第13項中……に改め、同項を同条第9項とする。
要は「…から…まで」をこのような場合にも使えるのかということだが、肯定してもよいのではないかと思う。
(このシリーズ終わり)
*1:この法律案は、撤回されている。