自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

一部改正例規を改正する例規の立案等~改正規定の特定を中心として(16)

(「(6) 改正規定の特定の簡略化」の続き)

 考えられるのは、条を引用する場合に「第〇条から第〇条まで」とするように、「…から…まで」といった引用ができないかである。「…から…までの改正規定」とした事例として、次のものがある。

   地方税法等の一部を改正する法律(平成18年法律第7号)

   附 則

 (施行期日)

第1条 この法律は、平成18年4月1日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 (1) 第1条中地方税法第700条の22の3の改正規定並びに同法附則第15条第28項から第30項までの改正規定及び同条に3項を加える改正規定(同条第57項に係る部分に限る。)並びに附則第13条第23項及び第24項の規定 平成18年6月1日

 (2)・(3) (略)

 平成18年法律第7号附則第1条の下線部の改正規定は、次のとおりである。

 附則第15条中……、同条第28項中……に改め、同項を同条第24項とし、同条第29項中……に改め、同項を同条第25項とし、同条第30項中……を削り、同項を同条第26項とし、……

 この事例では、項の移動も当該項の改正規定に含めているが、令和3年法律第7号第5条の下線部は、「第〇項の改正規定」では網羅し切れない部分もあるので、あえてこの事例に倣うのであれば、次のようにでもすることになるのだろう。

 同条第6項を同条第4項とする改正規定、同条第7項から同条第16項の改正規定及び同項を同条第28項とし、同項の前に1項を加える改正規定を次のように改める。

 ただし、平成18年法律第7号の事例は、項を追加するために項を跨いで改正をしているため、このようにすると分かりにくい面がある。

 むしろ、この事例では「同条第6項を同条第4項とする改正規定から同条第16項を同条第28項とし、同項の前に1項を加える改正規定までを次のように改める」とし、「……改正規定から……改正規定まで」というように引用した方が分かりやすいと思うが、このようにした法律の例は見つけることができなかった。

 唯一見つけることができたのは、第156回国会において衆第2号として提案された次の法律案である*1

   健康保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

 健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)の一部を次のように改正する。

(略)

 附則第51条中地方公務員等共済組合法第59条第3項から第6項までを削る改正規定から同条第13項を同条第9項とする改正規定までを次のように改める。

 この平成14年法律第102号附則第51条の下線部の改正規定は、次のとおりである。

 第59条第3項から第6項までを削り、同条第7項中……に改め、同項を同条第3項とし、同条第8項を同条第4項とし、同条第9項を同条第5項とし、同条第10項を同条第6項とし、同条第11項中……に改め、同項を同条第7項とし、同条第12項中「から第六項まで」を削り、同項を同条第8項とし、同条第13項中……に改め、同項を同条第9項とする。

 要は「…から…まで」をこのような場合にも使えるのかということだが、肯定してもよいのではないかと思う。

(このシリーズ終わり)

*1:この法律案は、撤回されている。