自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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省令レベルにおける新旧対照表方式~原子力規制委員会規則

 原子力規制委員会規則は、新旧対照表方式による改正方法として、次のような改正文を置き、新旧対照表は別表として置く方式を採っていた(2019年6月8日付け記事「省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(下)」参照)。

液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する規則(平成29年経済産業省令第33号)

 (改正の対象となる規則の一部改正)

第1条 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)の一部を、別表により改正する。

第2条 前条に定める表中の傍線及び二重傍線の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。

 (1) 改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改めること。

 (2) 条項番号その他の標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)を改正前欄に掲げている場合であって、これに対応するものを改正後欄に掲げていないときは、当該対象規定を削り、対象規定を改正後欄に掲げている場合であって、これに対応するものを改正前欄に掲げていないときは、当該対象規定を加えること。

 しかし、3月7日に公布された令和6年原子力規制委員会規則第1号は、21条建てで21本の規則を改正しているが、他の省庁と同様、各条に改正文と新旧対照表を置く形を採っている。

 原子力規制委員会が改正方式を改めたのであれば、新旧対照表を別表として置く方式を採る省庁はなくなることになるが、令和6年原子力規制委員会規則第1号は、他の省庁に類例がない方式としている。

 新旧対照表の前に置く改正文は、改正内容に応じて表現を異にするのが通常だが、令和6年原子力規制委員会規則第1号では、改正内容にかかわらず、21条全てで次のような改正文となっている。

 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下この条において「対象規定」という。)は、その標記部分が同一のものは当該対象規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正前欄に掲げる対象規定で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを削り、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。

 これは、改正内容に応じて改正文を変える煩わしさを避けたのであろうが、余事記載が気になるところである*1。むしろ、新旧対照表方式を採る場合の改正文を定める通則規則を定めた上で、個別の改正規則においては詳細な改正文を置かない、厚生労働省のような方式とすることを志向した方が合理的ではないかと感じる。

*1:もちろん、新旧対照表方式において余事記載云々と言ってみても仕方がないという意見もあるだろう。