自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(下)

 (2) 改正部分の表記に従来のように傍線のみを用いて新旧対照表を作成する方式

  ア (1)に準じた改正文を用いる方式

 この方式は、農林水産省令及び復興庁令で用いられており、その改正文は、次のとおりである。

家畜改良増殖法施行規則の一部を改正する省令(平成30年農林水産省令第31号)

 家畜改良増殖法施行規則(昭和25年農林省令第96号)の一部を次のように改正する。

 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分(以下「傍線部分」という。)でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分があるものは、これを当該傍線部分のように改め、改正後欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正前欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを加え、改正前欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを削る。

  イ 改正文を「〇〇施行規則の一部を次の表のように改正する。」とする方式

 この方式は、厚生労働省令で用いられており、「〇〇施行規則の一部を次の表のように改正する。」という改正文を置き、引き続き置かれる新旧対照表の右肩に「(傍線部分は改正部分)」との表記がなされる。

 厚生労働省は、当初は(1)の方式が採られていたが、こうした方式に変更したのは、改正文で具体的に書かなくても、新旧対照表が示す意味は誰もが分かることであり、言わば慣行になっているという判断ではないだろうか。

 その良し悪しはともかく、この方式が新旧対照表方式の最も簡略にした方式と言える。

 (3) 新旧対照表を別表として置く方式

 この方式は、現在は原子力規制委員会規則で用いられているほか、かつては経済産業省令でも用いられていた。両者は改正文を、次のように2条建てとするか、本則のみとするかでの違いがある。

<2条建てとする例>

液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の一部を改正する規則(平成29年経済産業省令第33号)

 (改正の対象となる規則の一部改正)

第1条 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)の一部を、別表により改正する。

第2条 前条に定める表中の傍線及び二重傍線の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。

 (1) 改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改めること。

 (2) 条項番号その他の標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)を改正前欄に掲げている場合であって、これに対応するものを改正後欄に掲げていないときは、当該対象規定を削り、対象規定を改正後欄に掲げている場合であって、これに対応するものを改正前欄に掲げていないときは、当該対象規定を加えること。

 <本則のみとする例>

核燃料物質の使用等に関する規則の一部を改正する規則(平成30年原子力規制委員会規則 第4号)

 核燃料物質の使用等に関する規則(昭和32年総理府令第84号)の一部を別表により改正する。この場合において、同表中の傍線及び二重傍線の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。

 (1) 改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改めること。

 (2) 条項番号その他の標記部分に二重傍線を付した規定を改正後欄に掲げている場合であって、改正前欄にこれに対応するものを掲げていないときは、当該規定を新たに追加すること。

3 最後に

 省令レベルにおける新旧対照表方式の現状を簡単に整理してみた。

 どの方式が最も適当か判断に当たりポイントとなるのは、(1)改正に疑義が生じないようにすること、(2)新旧対照表の内容で法的効力が及ぶ部分をできる限り少なくすることの2点であると考えられる。

 この点は、改め文で記載している内容と法的効力が及ぶ部分を明示した通則法を制定すれば解決するのであるが、それらの項目自体は法律事項ではないので、制定にはハードルが高いのではないかと感じる。

 余談だが、国の官僚にとって国会対応が荷重になっていると言われている中で、国会議員が霞ヶ関働き方改革と言って新旧対照表方式の旗振りをしているのを見ると、それならまずやることがあるだろうと思うところである。