押印見直しを受けた省令の改正が昨年末の官報を賑わしたが、様式改正の場合は新旧対照表方式によると面倒な面があるため、一の省令の改正の中で条文の改正は新旧対照表方式を用い、様式の改正は改め文方式を用いる例が多い。このように新旧対照表方式と改め文方式を併用するのが一般的になっていると言えるが、なかにはその併用ができない方式もあるように感じる。
以前(以下の参考記事参照)、省令における新旧対照法方式を次のように分類した。
1 改正部分の表記に二重傍線など従来は用いていない符号を用いて新旧対照表を作成する方式
2 改正部分の表記に従来のように傍線のみを用いて新旧対照表を作成する方式
(1) 1に準じた改正文を用いる方式
(2) 改正文を「〇〇施行規則の一部を次の表のように改正する。」とする方式
3 新旧対照表を別表として置く方式
新旧対照表方式と改め文方式を併用する場合には新旧対照表に続けて改め文による改正を行うことになるが、冒頭に「〇〇施行規則の一部を次のように改正する。」という改正文を置くとその改正文が改め文方式で改正している部分にもかかっていると考えるのであろう。
しかし、2(2)の方式だと事情が変わってくる。2(2)は、厚生労働省で用いられている方式であり、「押印を求める手続の見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第208号)」では一の省令の改正の中で新旧対照表方式と改め文方式を併用している。その場合の改正文は、「〇〇施行規則の一部を次のように改正する。」とし、改行して「次の表のように改正する。」という改正文を置いて新旧対照表を置き、続けて改め文による改正規定を置いている。これは、「〇〇施行規則の一部を次のように改正する。」という改正文は、「次の表のように改正する。」で始まる新旧対照表方式による改正と改め文方式による改正の両方にかける意図なのであろう。
ここで気になるのは、「……改正する」という文言が複数あることである。一部改正法令における「改正する」は、改正すべき法令の全体を指示して表現する場合に用いられることとされていることからすると(法制執務研究会「新訂ワークブック法制執務(第2版)」(P375)参照)、新旧対照表方式による改正にのみかかる「次の表のように改正する。」の改正文は適切でないことになる。
もちろん、新旧対照表方式における独自ルールと割り切る考え方もあるが、そうしないのであれば、改正文を、「〇〇施行規則の一部を次のように改正する。」とのみ表記して「次の表のように改正する。」という改正文を置かないことにするか、「〇〇施行規則の一部を次の表及び改め文のように改正する。」とでもせざるを得ない。
なお、3の方法は原子力規制庁で用いられているが、この方法は新旧対照表方式と改め文方式の併用にはそぐわないだろう。
(参考記事)
2019年5月24日付け記事「省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(上)」
2019年5月31日付け記事「省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(中)」
2019年6月8日付け記事「省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(下)」