自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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略称を置く位置

 法文に置かれる略称は、略称の対象となる言葉が初出する場所に置かれるのが通常であるが、初出する場所には置かない方がいいと思われる場合もある。

 次の規定は、「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律(平成28年法律第12号)」第3条第2項の規定である。

国は、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を講ずるに当たっては、平成28年度から平成36年度までの間(第5条第1項において「集中実施期間」という。)を、戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を集中的に実施する期間とし、戦没者の遺骨収集を計画的かつ効果的に推進するよう必要な措置を講ずるものとする。

 上記の規定は、「平成28年度から平成36年度までの間」という文言について「集中実施期間」という略称を置いているが、これは、当該規定でこの期間を「……を集中的に実施する期間とし」ているためこうした略称にしているのだろう。しかし、そうであるならば当該規定で略称を置くのではなく、次に出てくる規定のところで「第3条第2項に規定する期間(以下「集中実施期間」という。)」という形で置いた方がスッと読むことができる*1

 ただし、この法律では、「集中実施期間」という用語は、第5条第1項の1か所でしか使っていないので、あえて略称を置く必要はない。どうしてもこの用語を法律に書きたいのであれば、第3条第3項として、「前項に規定する期間は、「集中実施期間」という。」というような規定を置くより仕方ないかと思う。

*1:附則で置かれる「施行日」という略称は、施行期日の規定で置くよりも、その後引用する必要がある規定のところで置く方が一般的なのも、そうした意図なのではないかと思う。