法令による規制手法の代表例としては、許可を挙げることができる。許可とは、「法令による特定の行為の一般的禁止を公の機関が特定の場合に解除し、適法にこれをすることができるようにする行為をいう」*1。
その他よく用いられる規制手法に登録がある。登録とは、「一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える特定の帳簿に記載することをいう」*2。つまり、登録は、これらの法律事実又は法律関係を公に表示し、又は証明することを目的とするものであるが、登録に対して一定の規制措置を設けることが通例であり、「いかなる法律効果を付与するかは、それぞれの法律に定めるところによる」*3とされている。したがって、法令の規定の仕方によっては、登録において許可と同様の運用を行うことも可能ということになる。
では、実際に許可と登録は、どのような違いがあるのか、許可と登録の両方の制度を有する法律を取り上げて、6回にわたってその違い等を見ていくことにしたい。
1 条文比較
行政手続に関する規定は、時系列に沿って規定されることが通例である。
具体的にどのような規定が置かれるのかについて、許可と登録の両方の制度を規定している 「使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号)」を見てみる。条文の構成は、次のとおりである。
解体業の許可 | 引取業者の登録 |
---|---|
・解体業の許可(第60条) ・許可の申請(第61条) ・許可の基準(第62条) ― ・変更の届出(第63条) ― ・廃業等の届出(第64条) ― ・標識の掲示(第65条) ・許可の取消し等(第66条) |
・引取業者の登録(第42条) ・登録の申請(第43条) ・登録の実施(第44条) ・登録の拒否(第45条) ・変更の届出(第46条) ・引取業者登録簿の閲覧(第47条) ・廃業等の届出(第48条) ・登録の抹消(第49条) ・標識の掲示(第50条) ・登録の取消し等(第51条) |
特徴的な点について触れていくことにする。
(1) 許可・登録の規定
まずは、許可又は登録を受けなければならない旨の規定が置かれる。「使用済自動車の再資源化等に関する法律」では第2項で更新の規定が置かれているが、当該規定は別条とされることもある*4。
(2) 許可の基準・登録の拒否等の規定
申請の規定の後に、許可等を拒む場合の規定が置かれる。
許可の場合は、「許可の基準」という形で置かれる。その規定の書き方には、「積極的に一定の場合には『許可をしなければならない』とするもの(積極的規定)と、消極的に一定の場合には『許可をしてはならない』とするもの(消極的規定)とがある」*5。
登録の場合は、「〇〇は、……次条の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を登録簿に登録しなければならない」といった「登録の実施」の規定を置き、その次に「登録の拒否」の規定を置く。登録は、行政庁の裁量が狭いとされているため、「登録の拒否」の規定も「……の場合は、登録を拒否しなければならない」とされることになる。
なお、許可と登録とにおける基準等の違いについては、後述する。
(3) 登録簿の閲覧の規定
登録に関し特徴的な規定として、「登録簿の閲覧」の規定がある。これは、登録が一義的には一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える特定の帳簿に記載する制度であることから規定されるものであろう。
ただし、許可の場合でも、許可業者の名簿を備え置き、一般の閲覧に供する規定を置くことがある*6。
(4) 登録の抹消の規定
登録については、その抹消の規定が置かれるのが通例である。当該規定である「使用済自動車の再資源化等に関する法律」第49条は、更新を受けなかったとき(第42条第2項)、廃業となったとき(第48条第2項)、そして登録を取り消したとき(第51条第1項)には登録を抹消することとしている。条文の配列からすると、登録の取消しの後に置いてしかるべきだと思うが、その前に置かれている理由はよく分からない。