自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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経過規定(8)

  ウ その他

 附属機関の経過規定に関連した事項について、実際に聞かれて疑問に思ったことがある。それは、附属機関の会議の招集について「会議は、会長が招集する」といった規定を置くことがあるが、会長は委員の互選によることとしている場合には、最初の会議は招集者がいないことになり、その場合には、附属機関の会長が招集することはできないので、長が招集すればいいのかということである。

 法律では次のような例がある。 

   ユネスコ活動に関する法律(昭和27年法律第207号)

 (会議)

第15条 国内委員会の会議は、年2回会長が招集する。但し、会長は、必要があると認めるときは、臨時にこれを召集することができる。

   附 則

 (第1回の会議の招集)

6 国内委員会の第1回の会議は、第15条の規定にかかわらず、文部大臣が招集する。

  例えば、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第11条第1項などに会議の招集の規定があるが、上記のような経過規定は置かれていない。会長が決まっていない場合は、その審議会を所管する機関の長が招集するのが当然だと考えているのかもしれない*1

 さらに、近年は、会議の招集に関する規定自体置かれていない例が多いように思う。確かに、会議の成立要件とか議決の方法などは大切であろうが、誰が招集するかは、審議会に関してはどちらでもいい問題なのかもしれない。

 (3) 特別会計の廃止に伴う経過規定

 特別会計を、例えば平成18年度限りで廃止する場合には、廃止条例の施行日は平成19年4月1日とするが、出納整理期間があること等により、所要の経過規定を置く必要がある。

 法律の例として、国立学校特別会計法が国立学校法人法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成15年法律第117号)により廃止され、平成16年4月1日から施行されたが、同法に次の経過規定が置かれている。

   附 則

 (国立学校特別会計法の廃止に伴う経過措置)

第2条 国立学校特別会計における平成15年度の収入及び支出並びに同年度以前の年度の決算に関する事務については、なお従前の例による。

2 (略)*2

3 この法律の施行の際現に国立学校特別会計に所属する権利及び義務……は、政令で定めるところにより、一般会計に帰属するものとする。

  上記の第3項のような規定が一般的に必要なのかどうかは、検討してみたい。

*1:古い事例だが、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」附則第9条に「前条の規定により新委員が任命された後最初に招集すべき教育委員会の会議は、新法第13条第1項の規定にかかわらず、地方公共団体の長が招集する。」という規定が置かれているが、このような場合は、附属機関と違って当然長が招集するとも言い難いので、経過規定を置いたのではないかと思う。

*2:附則第2条第2項は、同条第1項に規定する事務を行う主体を定めている。