自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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地方自治法の規定修正案(2)~第2編第5章

第74条第1項・第5項

 「選挙権を有する者」の略称は、第5項で置く方が適当。したがって、第1項の「(以下この編において「選挙権を有する者」という。)」は削り、第5項の「第1項の選挙権を有する者」→「第1項の選挙権を有する者(以下この編において「選挙権を有する者」という。)」

第74条第5項

 第1項の選挙権を有する者とは、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第22条第1項又は第3項の規定による選挙人名簿の登録が行われた日において選挙人名簿に登録されている者とし、その総数の50分の1の数は、当該普通地方公共団体選挙管理委員会において、その登録が行われた日後直ちに告示しなければならない。

 選挙管理委員会による選挙人名簿に登録された者であることの証明(地方自治法第74条の2第1項)は、選挙管理委員会が審査をするときにおいて名簿に登録された者であるとされているので(松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P250))、「……選挙人名簿に登録されている者」の次に「(次条第1項の規定による審査の際に登録されている者に限る。)」といった文言を付加するのが正確になる。

(参照条文)

   地方自治法

第74条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない。この場合においては、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から20日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。

②~⑬ (略)

第74条第6項第1号

 「公職選挙法第27条第1項又は第2項の規定により選挙人名簿にこれらの項の表示をされている者……」

→「公職選挙法第27条第1項又は第2項の規定により選挙人名簿にこれらの規定の表示をされている者……」

(参照条文)

   公職選挙法(昭和25年法律第100号)

 (表示及び訂正等)

第27条 市町村の選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録されている者が第11条第1項若しくは第252条若しくは政治資金規正法第28条の規定により選挙権を有しなくなつたこと又は当該市町村の区域内に住所を有しなくなつたことを知つた場合には、直ちに選挙人名簿にその旨の表示をしなければならない。

2 市町村の選挙管理委員会は、第21条第2項に規定する者を選挙人名簿に登録する場合には、同時に、選挙人名簿に同項の規定に該当する者である旨の表示をしなければならない。

3 (略)

第74条第7項

 「第1項の場合において、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長の選挙が行われることとなるときは、政令で定める期間、当該選挙が行われる区域内においては請求のための署名を求めることができない。」

→「第1項の請求のための署名は、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長の選挙が行われることとなるときは、政令で定める期間、当該選挙が行われる区域内においては求めることができない。」

(コメント)

 「第1項の場合において」がしっくりこないので、書き直せば上記のようにすることが考えられる。ただし、そのことによって主語がないことの違和感が大きくなるが、それは制度の条文化における問題(第74条第8項の部分を参照)による面が大きいと思う。

(参照条文)

   地方自治法

第74条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下この編において「選挙権を有する者」という。)は、政令で定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができる。

②~⑨ (略)

第74条第8項

 選挙権を有する者は、心身の故障その他の事由により条例の制定又は改廃の請求者の署名簿に署名することができないときは、その者の属する市町村の選挙権を有する者(代表者及び代表者の委任を受けて当該市町村の選挙権を有する者に対し当該署名簿に署名することを求める者を除く。)に委任して、自己の氏名(以下「請求者の氏名」という。)を当該署名簿に記載させることができる。この場合において、委任を受けた者による当該請求者の氏名の記載は、第1項の規定による請求者の署名とみなす。

 この制度では、署名簿に署名を記載した者は、全て請求者であるということにしているのだが(このことは、「請求者の氏名」という略称を用いていることからも明らかである)、請求者はあくまでも条文上は「代表者」*1とされている者として、その請求に当たっては一定数の選挙権を有する者の署名がある署名簿を添えてしなければならないとする方法もあるのではないかと思う。そのようにした方が、実体に合っており、他の規定も含めてスッキリと書けるのではないかと思う。

*1:実際には「代表者」というよりも「発起人」の方がイメージに近いと思う。