自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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地方自治法の規定修正案(3)~第2編第6章

第90条第2項

前項の規定による議員の定数の変更は、一般選挙の場合でなければ、これを行うことができない。

 この規定の意味は、議員の定数を変更した場合には、その適用は次の一般選挙からであるということである(松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P312)参照)。

 本来であれば、議員の定数の変更は、一般選挙により当選した議員の任期の始期から適用することとすべきとも思うが、議員定数を変更した場合には、その後初めて告示又は公示がされる選挙から適用するとするのが通例である(平成28年法律第49号附則第3条第1項等参照)。

 そうすると、「前項の規定による議員の定数の変更は、その後初めて告示される一般選挙から適用するものとしなければならない」といった表現になるのだろうが、「前項の規定による議員の定数の変更は、一般選挙を始期として行わなければならない」といった表現でもいいのではないかと思う。

(参照条文)

   衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号)

   附 則

 (適用区分)

第3条 第2条の規定による改正後の公職選挙法(以下この条及び次条において「新公職選挙法」という。)の規定(新公職選挙法第18条第2項及び第175条第5項の規定を除く。)は、衆議院議員の選挙については一部施行日以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙(以下この項において「一部施行日以後の初回の総選挙」という。)から、衆議院議員の選挙以外の選挙については一部施行日以後その期日を公示され又は告示される選挙について適用し、一部施行日の前日までにその期日を公示された衆議院議員の総選挙、一部施行日以後の初回の総選挙の期日の公示の日の前日までにその期日を告示される衆議院議員の選挙及び一部施行日の前日までにその期日を公示され又は告示された選挙(衆議院議員の選挙を除く。)については、なお従前の例による。

2・3 (略)

 

第92条の2

普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

  • この規定を見ていつも感じるのが、「主として同一の行為をする法人」とは何だろうということである。松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P325)には、「「主として同一の行為をする法人」というのは、当該普通地方公共団体に対する請負が、当該法人の業務の主要部分を占め、当該請負の重要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度に至つている場合の当該法人の意である」と記載されているが、この記載自体よく分からない。政令委任して、政令でしっかり書くことがいいのではないかと感じる。
  • 「及び」と「又は(若しくは)」の使い分けがよく分からない。両立し得ない役職の場合は「又は(若しくは)」を使っているように見えるが、そこまで書き分ける意味はあまりないように感じる。

 

第104条

 「普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。」

→「普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、及び議会を代表する。」

(コメント)

 これはどう考えても並列だと思う。

 

第115条の2第1項 

「……真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等……」

→「……真に利害関係を有する者、学識経験を有する者等……」

(コメント)

 「又は」にする理由はないと思う。

 

第117条

普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、……」

(コメント)

 「これらの者」とするのであれば、「自己若しくは」は書かなくてもいいとは思う(所得税法第77条第1項参照)。ただし、「自己」と「父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹」を同列に扱うのが嫌であれば、「父母……」について「父母等」といった略称を置くのがよいと思う。

(参照条文)

   所得税法(昭和40年法律第33号)

 (地震保険料控除)

第77条 居住者が、各年において、自己若しくは自己と生計を一にする配偶者その他の親族の有する家屋で常時その居住の用に供するもの又はこれらの者の有する第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する資産を保険又は共済の目的とし、かつ、地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害(以下この項において「地震等損害」という。)によりこれらの資産について生じた損失の額をてん補する保険金又は共済金が支払われる損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金(政令で定めるものを除く。以下この項において「地震保険料」という。)を支払つた場合には、その年中に支払つた地震保険料の金額の合計額(その年において損害保険契約等に基づく剰余金の分配若しくは割戻金の割戻しを受け、又は損害保険契約等に基づき分配を受ける剰余金若しくは割戻しを受ける割戻金をもつて地震保険料の払込みに充てた場合には当該剰余金又は割戻金の額(地震保険料に係る部分の金額に限る。)を控除した残額とし、その金額が5万円を超える場合には5万円とする。)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

2・3 (略)

 

第118条第1項

法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第46条第1項及び第4項、第47条、第48条、第68条第1項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。

  • 普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条」→この「第95条」は公選法の規定だろうから、「……同法第95条」とするか、「……並びに第95条(普通地方公共団体の議会の議員の選挙に係る部分に限る。)」とする必要あり
  • 後段は、別項にすべき

 

第127条第1項

 「普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき、又は第92条の2(第287条の2第7項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に該当するときは、その職を失う。……」

→「普通地方公共団体の議会の議員は、被選挙権を有しない者であるとき、……」

 

第128条

 「普通地方公共団体の議会の議員は、公職選挙法第202条第1項若しくは第206条第1項の規定による異議の申出、同法第202条第2項若しくは第206条第2項の規定による審査の申立て、同法第203条第1項、第207条第1項、第210条若しくは第211条の訴訟の提起に対する決定、裁決又は判決が確定するまでの間(……)は、その職を失わない。」

→「普通地方公共団体の議会の議員は、公職選挙法第202条第1項若しくは第206条第1項の規定による異議の申出、同法第202条第2項若しくは第206条第2項の規定による審査の申立て又は同法第203条第1項、第207条第1項、第210条若しくは第211条の訴訟の提起に対する決定、裁決又は判決が確定するまでの間(……)は、その職を失わない。」

 

第137条

 「普通地方公共団体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なお故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる。」

→ 「普通地方公共団体の議会の議員が正当な理由がなくて招集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が特に招状を発しても、なお故なく出席しない場合には、議長は、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる。」