自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

執行機関(10)

 (2) 執行機関間における法定の事務分掌の変更

 自治体が行う必要のある事務をどの執行機関で執行するかは、原則として法律の規定によって決することになるが、他の執行機関の事務とする方法も存する。

  ア 職務権限の特例

 特定の事務について、他の執行機関の事務とすることができる旨の規定を法律で設けることがある。

 次の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第23条の規定は、教育委員会が所掌する一定の事務について、条例で首長が所掌する事務とすることを認める規定である。

 (職務権限の特例)

第23条 前2条の規定にかかわらず、地方公共団体は、前条各号に掲げるもののほか、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、次の各号に掲げる教育に関する事務のいずれか又は全てを管理し、及び執行することとすることができる。

 (1) 図書館、博物館、公民館その他の社会教育に関する教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること(第21条第7号から第9号まで及び第12号に掲げる事務のうち、特定社会教育機関のみに係るものを含む。)。

 (2) スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)。

 (3) 文化に関すること(次号に掲げるものを除く。)。

 (4) 文化財の保護に関すること。

2 地方公共団体の議会は、前項の条例の制定又は改廃の議決をする前に、当該地方公共団体教育委員会の意見を聴かなければならない。

 上記の規定に基づく条例は、上記の事務について首長の事務とする旨を定める条例とし、併せて地方自治法158条第1項後段の規定による条例において当該事務を特定の部署に分掌させることとするのが通常の考え方になると思われる。