自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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憲法に自衛隊を位置付ける規定

 ある憲法学者が、憲法自衛隊を位置付ける規定として、第72条*1に第2項として次の規定を設けることを提案しているのを目にした。

内閣総理大臣は、法律に基づいて設置される自衛隊を内閣を代表して指揮監督する。

 もちろん、こうした規定を設けることの適否については、私は判断できないのだが、ここでは法制執務的に気になったことについて触れてみる。

 自衛隊に対する指揮監督権は、自衛隊法は、内閣総理大臣のほか(第7条)、隊務の総括については防衛大臣が行うこととしている(第8条)。この自衛隊法の規定を改正しないことを前提とするのであれば、上記のような書き方ではなく、次のような書き方とすべきだろう*2

内閣総理大臣は、法律の定めるところにより、内閣を代表して自衛隊を指揮監督する。

 なお、現行の憲法第72条で内閣総理大臣は行政各部を指揮監督する権限を有することは明記されており、自衛隊もこれに含まれるだろうから、現行の規定を受けて書くのであれば、次のような規定になるだろう。

内閣総理大臣は、前項の規定による自衛隊の指揮監督については、内閣を代表して行う。

(旧ブログ参考記事)

*1:憲法第72条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」とする規定である。

*2:自衛隊」を「自衛のための必要最小限度の実力組織」というような表記とすることも考えられるが、「自衛隊」と明記するのであれば、現状追認的なことと考え、あえて「法律に基づいて設置される」と表記しない方がいいと思う。