自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

解釈

「直ちに」~道路交通法に基づく救護義務違反が問われた事例

ひき逃げで逆転無罪=長野の15歳死亡事故―東京高裁 長野県佐久市で2015年、横断歩道を渡っていた中学3年の男子生徒=当時(15)=をはねて死亡させる事故を起こした際、直ちに救護しなかったとして道交法違反(ひき逃げ)罪に問われた男性被告(50)の控…

教育委員会の事務の首長への移管

「まる三重リポート」三重県の文化振興条例案 法令への認識の甘さ露呈 条文が法に抵触する可能性が浮上している県の文化振興条例案。23日の三重県議会環境生活農林水産常任委員会(山崎博委員長、8人)は「法律上の整理が不透明」として、条例案を事実上の…

執行機関(13)

(2) 必ずしも条例事項とはされていない出先機関 前回(2022年5月21日付け記事「執行機関(12)」)、松本・逐条の引用部分で触れているが、いわゆる土木事務所は、条例で設置する必要はないとされている*1。 しかし、実際には、土木事務所に一定の許認可権…

執行機関(12)

6 出先機関に関する条例事項 (1) 条例事項とされている出先機関とその考え方 出先機関について法律で条例に委任する事項は、その位置、名称及び管轄区域であることが通例であるが、自治体独自で設置する出先機関にあっては、その所掌事務も併せて定めること…

執行機関(11)

イ 委任・補助執行 長の事務を行政委員会に行わせること、及び行政委員会の事務を長に行わせることについては、地方自治法に次のとおり委任及び補助執行に関する規定がある。 第180条の2 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地…

執行機関(10)

(2) 執行機関間における法定の事務分掌の変更 自治体が行う必要のある事務をどの執行機関で執行するかは、原則として法律の規定によって決することになるが、他の執行機関の事務とする方法も存する。 ア 職務権限の特例 特定の事務について、他の執行機関の…

執行機関(9)

5 事務分掌 (1) 各執行機関における事務 ア 原則 自治体が処理する事務については、執行機関ごとに法定されている。ただし、首長が担任する事務について規定する地方自治法第149条の規定は例示規定となっており*1、他の執行機関が処理することができない事…

執行機関(8)

(2) 首長部局以外の執行機関等 首長部局以外の執行機関等で条例事項とされているものは、次のとおりである。 市町村の監査委員に事務局を置く場合の当該事務局(地方自治法第200条第2項) 警視庁及び道府県警察本部の内部組織(警察法第47条第4項) 地方公…

執行機関(7)

b 首長の権限に属する事務を会計部局が行うこととした場合に条例で定めることが必須なのか 前回、首長の権限に属する事務を会計部局が行うこととした場合に条例で当該会計部局について定めている3県の条例の規定を見てみた。 では、首長の権限に属する事務…

執行機関(6)

イ 直近下位の内部組織に当たるか疑義がある組織 (ア) 会計部局 a 会計部局を規定する条例の事例 会計に関する組織は、会計管理者の権限に属する事務を処理するため、規則で定めることとされている*1。そして、会計管理者が会計事務を処理することについては…

執行機関(5)

4 本庁組織における条例事項 (1) 首長部局 ア 内部組織における条例事項 自治体の内部組織については、地方自治法第158条第1項後段で長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌事務が条例事項とされている。 地方自治法第158条の規定は平成15年法律第81号…

執行機関(4)

3 組織例規の原則~組織法定主義 自治体の個々の組織について触れる前に、組織法定主義の考え方について触れておくこととする。 組織に関する事項は、権利義務に関する事項であり、法律事項であるとされている*1。しかし、その全てについて法律で規定するこ…

執行機関(3)

(2) 自治体の執行機関 自治体の執行機関という概念は、議決機関である議会に対して、行政事務を管理執行する機関を表すために地方自治法で設けられた概念である*1。 自治体の執行機関については、地方自治法第180条の5に定めがあるが、地方自治法における行…

執行機関(2)

2 執行機関の概念 (1) 作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念 自治体の行政委員会の概念は理解が難しいということをよく聞く。これは行政機関の概念が作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念とが混在していることによるものと思われる。行政…

執行機関(1)

私が職員になった当時は、組織改定は小規模なものを除きほとんど行われていなかったが、法規担当となった時期は、首長が変わったこともあり、頻繁に行われるようになった。そのため、組織に関する法制度については特に留意する必要があったことから、関心が…

自治体の機関

1 機関の性格等 機関名 性格 任命権 規則・規程制定権*1 事務局*2 附属機関の設置 所属職員への事務委任 首長 執行機関(地自法138条の4第1項・139条) 有(地公法6条1項) 規則(地自法15条1項) ― 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法153条1項…

「基づく」~日本学術会議の会員の任命問題に関連して

今回は、今記載しているシリーズを中断して、話題になっている日本学術会議(以下「会議」という。)が推薦した会員候補のうち6人を菅政権が任命しなかったことを取り上げる。 日本学術会議法(以下「法」という。)第7条第2項は、「会員は、第17条の規定*…

検事長の定年延長

政府が東京高検検事長の定年を延長することとしたことが問題となっている。報道によると、野党は、過去の国会答弁における解釈を変更したことを問題視しているものが多いように見受けられるが、文理解釈によれば、検察官に国家公務員法の定年延長の規定が適…

バックアップデータは公文書に当たるのか

今回は、今記載しているシリーズを中断して、「桜を見る会」の招待者名簿のバックアップデータが公文書に当たるかどうかについて、いわゆる組織共有文書に該当しないため公文書に当たらないとする政府の見解について批判がなされていることを取り上げること…

自衛官募集の協力義務

今回は、現在記載しているシリーズを中断して、自衛隊が自衛官募集のためダイレクトメールを送る目的で市町村に住民基本台帳に基づく氏名等のデータの提供を求めていることに関し、6割以上の市町村から協力を得られていないという安倍首相の国会における答…