イ 直近下位の内部組織に当たるか疑義がある組織
(ア) 会計部局
a 会計部局を規定する条例の事例
会計に関する組織は、会計管理者の権限に属する事務を処理するため、規則で定めることとされている*1。そして、会計管理者が会計事務を処理することについては法定されているため*2、通常は、会計部局を条例で定める必要はないことになる。
しかし、会計管理者は首長の補助機関とされており、首長の事務の他の執行機関への委任等が認められていることなどから、首長の権限に属する事務を会計管理者が行うことすることは可能だろう。そうすると、首長の事務を会計部局で行うこととした場合には、当該会計部局は直近下位の内部組織に当たり、条例で規定する必要があるのではないかとも考えられる。
都道府県レベルで見ると、次のとおり鳥取県、岡山県及び広島県の3県で会計部局を条例に規定している*3。
鳥取県行政組織条例
(趣旨)
第1条 この条例は、他の条例に定めるもののほか、知事の権限に属する事務を分掌させるために設ける内部組織及び会計管理者の権限に属する事務を処理させるために設ける組織について必要な事項を定めるものとする。
(設置)
第2条 地方自治法(昭和22年法律第67号)第158条第1項の規定に基づき、知事の権限に属する事務を分掌させるため、同項後段に規定する知事の直近下位の内部組織として、次の部局を置く。
(略)
(部局以外の組織及び分掌事務)
第15条 第2条の規定にかかわらず、会計事務に関する事項及び建設事業の評価に関する事項を分掌させるため、会計管理局を部局の外に置く。
2 会計管理局に長を置き、会計管理者とする。
3 会計管理者は、会計管理局の所掌事務をつかさどるとともに、知事を補佐し、県行政の重要政策の企画及び立案を行う。
4 会計管理者は、前項の事務を遂行するため、県行政全般にわたる総合的視野に立ち、部局長と相互に協力してその任に当たるものとする。
岡山県部等設置条例
(設置)
第1条 知事は、その権限に属する事務を分掌させるため、内部組織として、知事直轄の組織(危機管理及び消防に関する事項を分掌する組織)並びに次の部及び局を置く。
総合政策局
(中略)
出納局
(分掌)
第2条 部及び局の分掌事務は、次に掲げるとおりとする。
(1)~(8) (略)
(9) 出納局
(一) 会計の監督に関する事項
(二) 内部管理事務の効率化に関する事項
広島県局設置条例
(目的)
第1条 この条例は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第158条第1項の規定に基づき、局の設置に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(局の設置)
第2条 知事の権限に属する事務を分掌させるため、次の局を置く。
(略)
(分掌事務)
第3条 局の分掌事務は、次のとおりとする。
(略)
(局以外の組織及び分掌事務)
第4条 前2条の規定にかかわらず、会計及び用度に関する事務を分掌させるため会計管理部を、危機管理及び消防に関する事務を分掌させるため危機管理監を、局の外に置く。
3県の条例の規定を比較してみると、会計部局の分掌事務についてその固有の事務である会計事務を条例上明記するかどうかに違いがあり、鳥取県と広島県が明記しているのに対し、岡山県は明記していない。
また、会計部局の長を会計管理者としているかどうかについて、鳥取県と広島県は会計管理者としているのに対し*4、岡山県は出納局長を置くこととしている*5。
*3:なお、京都府は、会計に関する事務は直近下位の内部組織である「知事直轄組織」で処理することとし(京都府組織規程第11条の2第1項)、当該事務については「知事直轄組織」に置かれる会計管理者が掌理することとしているが(京都府組織規程第12条)、条例(京都府部制設置条例)では知事直轄組織の所掌事務は「広報、広聴、国際化及び職員に関する事項」としており、会計に関する事項については条例で規定していない。
*4:広島県は、広島県行政組織規則第16条第2項が「会計管理部は、会計管理者の権限に属する事務を処理するほか、広島県局設置条例に基づき、知事の権限に属する会計及び用度に関する事務を分掌する。」としている。
*5:もちろん、会計管理者が兼務することもあり得ると思う。