自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

自治体の機関

1 機関の性格等

機関名 性格 任命権 規則・規程制定権*1 事務局*2 附属機関の設置 所属職員への事務委任
首長 執行機関(地自法138条の4第1項・139条) 有(地公法6条1項) 規則(地自法15条1項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法153条1項)
教育委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項1号、地教行法2条) 有(地公法6条1項) 規則(地教行法15条1項) 必置(地教行法17条1項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地教行法25条)
公安委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第2項1号、警察法38条1項) 有(警視総監・本部長)(地公法6条1項) 規則(警察法38条5項) 警視庁・警察本部(警察法47条1項) 可(地自法138条の4第3項)
選挙管理委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項2号・181条1項) 有(地公法6条1項) 規程(地自法194条) 不可(地自法191条1項参照) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法193条・153条1項)
監査委員 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項4号・195条1項) 有(代表監査委員)(地公法6条1項) 都道府県:必置、市町村:任意(地自法200条1項・2項) 可(地自法138条の4第3項) 可(地自法201条・153条1項)
人事委員会(公平委員会) 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第1項3号、地公法7条1項~3項) 有(地公法6条1項) 規則(地公法8条5項) 人事委員会:必置(地公法12条1項)*3公平委員会:不可*4 可(地自法138条の4第3項) 特定の事務について事務局長に対してのみ可(地公法8条3項・4項)
労働委員会 執行機関(地自法138条の4第1項・180条の5第2項2号、労組法19条の12第1項) 規則(労組法26条2項) 必置(労組法19条の12第6項・19条の11第1項) 可(地自法138条の4第3項)
その他の委員会 執行機関*5 規程:収用委員会(土地収用法59条)、農業委員会(農委法34条) 不可*6 可(地自法138条の4第3項)
議会 議事機関 有(議長)(地公法6条1項) 会議規則・傍聴規則(地自法120条・地自法130条3項) 都道府県:必置、市町村:任意(地自法138条1項・138条2項) 不可
公営企業管理者 長の補助機関(地公企法7条)*7 有(地公企法15条) 管理規程(地公企法10条) *8 可(地公企法14条) 可(地公企法13条2項)
会計管理者 長の補助機関(地自法168条1項) 不可 可(長が行う。)(地自法171条4項)

2 機関相互の関係

 (1) 事務の委任・補助執行

  ア 首長の事務の委任・補助執行

    対行政委員会(委員):可(地自法180条の2)

    対管理者:可(補助期間である以上当然)

  イ 行政委員会(委員)の事務の委任・補助執行

    対首長:可(地自法180条の7)

    対行政委員会(委員):不可

    対管理者:想定されない。

  ウ 管理者の事務の委任・補助執行は、想定されない。

  エ 議会は、その事務の委任等及び他機関の受任等のいずれも不可

  (2) 職員の兼務

   いずれも可(長と行政委員会(委員)は、規定あり(地自法180条の3)。その他は解釈によるが、長と管理者は補助期間である以上当然であり、その他は兼務が認められている趣旨による 。) 

*1:規則・規程の制定権がなくても、告示を発出することは可能と一般的に考えられている。

*2:名称必置と考える必要はないと思われる。なお、事務局が設置不可の機関であっても事務局という名称の組織を置いている例はある。

*3:都道府県及び政令指定都市以外は任意:地公法12条4項

*4:競争試験等を行う公平委員会については設置可:地公法12条6項

*5:収用委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項3号、土地収用法51条1項)、海区漁業調整委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項4号、漁業法13条1項)、内水面漁場管理委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第2項5号、漁業法171条1項)、農業委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第3項1号、農委法3条1項)、固定資産評価審査委員会(地自法138条の4第1項・180条の5第3項2号、地方税法423条1項)。

*6:収用委員会(土地収用法58条1項参照)、海区漁業調整委員会(漁業法137条6項参照)、内水面漁場管理委員会(漁業法137条・137条6項参照)、農業委員会(農委法26条1項参照)。

*7:地方公営企業法及び地方公共団体の財政の健全化に関する法律(公営企業に係る部分)の施行に関する取扱いについて」(昭和27年9月29日自乙発第245号)記第一章第二節二(一)参照

*8:組織の性格上、事務局を置くことは想定できないが、地公企法14条に基づき「企業局」、「企業庁」といった名称の組織を置くところがある。