自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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執行機関(3)

 (2) 自治体の執行機関

 自治体の執行機関という概念は、議決機関である議会に対して、行政事務を管理執行する機関を表すために地方自治法で設けられた概念である*1

 自治体の執行機関については、地方自治法第180条の5に定めがあるが、地方自治法における行政機関概念は、作用法的行政機関概念が中心となっている*2

 しかし、自治体組織法制においては、事務配分的行政機関概念も用いている。例えば「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第23条の規定は、次のとおりである。

 (教育委員会の職務権限)

第23条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。

 (1) 教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。

 (2) 学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。

 (3) 教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。

 (4) 学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。

 (5) 学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。

 (6) 教科書その他の教材の取扱いに関すること。

 (7) 校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。

 (8) 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。

 (9) 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。

 (10)学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。

 (11)学校給食に関すること。

 (12)青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。

 (13)スポーツに関すること。

 (14)文化財の保護に関すること。

 (15)ユネスコ活動に関すること。

 (16)教育に関する法人に関すること。

 (17)教育に係る調査及び指定統計その他の統計に関すること。

 (18)所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。

 (19)前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。

 上記の規定の見出しは「教育委員会の職務権限」となっているが、これが教育委員会が行う事務を定めた規定であることは明らかだろう。

 このように、行政委員会は、法令において行政(官)庁であると同時に、事務配分的行政機関概念における行政機関として規定されることもあるため、分りにくくしている面があるのではないかと思う。行政委員会に関する法令の規定は、それが行政庁として用いられているのか、事務配分の単位として用いられているのかを意識することが大切になってくるのだろう。

*1:宇賀克也『行政法概説Ⅲ』(P32)参照

*2:宇賀前掲書(P32)参照