自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

執行機関(1)

 私が職員になった当時は、組織改定は小規模なものを除きほとんど行われていなかったが、法規担当となった時期は、首長が変わったこともあり、頻繁に行われるようになった。そのため、組織に関する法制度については特に留意する必要があったことから、関心がある分野であり、旧ブログにおいても取り上げたことがあった。

 その後、再び法規部署に戻った際に、組織改定に係る条例改正を経験したが、そのときに感じたことを併せて執行機関という組織について14回にわたってまとめてみることにする。

自治体法制執務雑感」関連記事

  • 2007年4月21日付け記事「自治体の組織(1)〜はじめに」
  • 2007年4月29日付け記事「自治体の組織(2)〜執行機関(その1)」
  • 2007年4月30日付け記事「自治体の組織(3)〜執行機関(その2)」
  • 2007年5月4日付け記事「自治体の組織(4)〜各執行機関(特に長)の組織・①出先機関(その1)」
  • 2007年5月5日付け記事「自治体の組織(5)〜各執行機関(特に長)の組織・①出先機関(その2)」
  • 2007年5月11日付け記事「自治体の組織(6)〜各執行機関(特に長)の組織・②内部組織」
  • 2007年5月12日付け記事「自治体の組織(7)〜委任と専決」

1 執行機関に関する法律の規定

 自治体の組織は、法律に規定されているもののみ設置できることとされている(憲法第92条)*1。したがって、自治体の組織について規定する法律の代表的なものは地方自治法であるが、地方自治法やその他の法律に定めのない種類の組織を自治体が設けることはできない。

 そして、附属機関のように、法律が定めた種類の機関について、自治体が独自に定めることができるものもあるが*2、執行機関は、法定の機関以外の機関を自治体が独自に定めることはできない*3。ただし、執行機関の内部組織について、条例に委任して自治体が定めることとしているものがある。ちなみに、地方自治法が執行機関(その出先機関を含む。)について条例に委任している事項を次に掲げておく。

  • 支庁・地方事務所等の設置(自治法第155条)
  • 行政機関の設置(自治法第156条第1項~第3項)
  • 内部組織の編成(自治法第158条)
  • 副知事及び副市町村長の定数(設置しない場合も含む。)(自治法第161条)
  • 職員の定数(自治法第172条第3項・第191条第2項)
  • 監査委員の事務局及びその職員定数(自治法第200条)
  • 監査委員に関する事項(自治法第202条)
  • 労政事務所の設置(自治法附則第4条第2項)

*1:憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定する。

*2:地方自治法第202条の3第1項は、「普通地方公共団体の執行機関の附属機関は、法律若しくはこれに基く政令又は条例の定めるところにより、その担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関とする。」と規定している。

*3:地方自治法第138条の4第1項は、「普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く。」と規定している。