2 執行機関の概念
(1) 作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念
自治体の行政委員会の概念は理解が難しいということをよく聞く。これは行政機関の概念が作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念とが混在していることによるものと思われる。行政が行使する権限に着目した概念が作用法的行政概念であり、行政が行う事務の配分の単位という点に着目した概念が事務配分的行政機関概念である*1。
作用法的行政機関概念は、戦前の行政官庁理論に基づくものである。行政(官)庁とは、行政主体のために、しかし自己の名をもって意思決定を行い、それを対外的に表示する権限を持った行政機関である*2。したがって、国の機関であれば大臣がこれに当たる。そして、行政(官)庁を補助する組織として、補助機関や執行機関*3が存在する。
これに対し、事務配分的行政機関概念は、行政組織内部における事務配分の単位を示す概念であり*4、戦後、GHQの意向により国家行政組織法においてこの概念が採用され、内閣府設置法においても用いられている*5。
上記のとおり、作用法的行政機関概念と事務配分的行政機関概念は、権限に着目するか、事務配分に着目するかという違いがある。ところで、「事務の配分」が無ければ「権限」はありえないが、一定の「事務の配分」がなされたからといって、当然に一定の内容の権限も生ずるということにはならない*6。したがって、当該組織が所管する事務を示すという意味では、事務配分的行政機関概念の方が適当ということになる。