自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

条例の立案

観光再興条例(下)

「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている観光産業の再興に関する条例案」の問題点と思われる事項は、以下のとおりである。 1 条例の題名と条例の目的の不一致 この条例案の題名は、「……観光産業の再興に関する条例」である。したがって、題名から想像…

観光再興条例(上)

「観光再興条例」めぐり県議会審議進む 新型コロナの影響を受けている観光産業への支援について、県の責務を明記する新たな条例案が県議会で審議されています。 条例案は、新型コロナの影響を受けている観光関連事業者に対し、沖縄県が支援する責務を負うと…

規制手法~免許制

規制手法の代表的なものは、許可制である。「許可」とは、法令による特定の行為の一般的禁止を公の機関が特定の場合に解除し、適法にこれをすることができるようにする行為をいう(吉国一郎ほか『法令用語辞典(第9次改訂版)』 (P167))。 これと同様の意…

条例に規定すべき事項

自治体が条例を制定しなければいけない事項は、住民等に義務を課し、又は権利を制限することである(地方自治法第14条第2項)。したがって、条例にはそれ以外の事項を定める必要はないのであるが、義務賦課・権利制限事項しか定めていない条例はほとんど存…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(6)

(2) 都道府県の条例に市町村について責務規定を置く問題の改善策 都道府県の条例に市町村について責務規定を置く目的は、市町村に対して協力を呼びかけることにあるとする見解がある*1。それは、市町村に一定の役割を果たして欲しいという意図とも同じであろ…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(5)

3 都道府県の事務と市町村の事務 (1) 都道府県の条例に市町村について責務規定を置くことについて 自治体の条例制定は、当該自治体の事務が対象となるのであるから(地方自治法第14条第1項、第2条第2項)、都道府県は市町村の事務について、市町村は都道…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(4)

(イ) 賃貸住宅紛争防止条例 東京都には「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」*1という条例がある。例えば、ネットにおける「2020.12.19「幻冬舎GOLD ONLINE」記事「東京ルール」に泣かされる…賃貸部屋の劣化、誰が支払う?」を一見する…

附則に規定すべき事項……その他諸々

〇〇町の再生エネ条例に不備 一部の事業者に指導や勧告できず 〇〇町の再生エネルギー促進条例が2018年12月の改正時から、一部の発電事業者に対して処分を伴う指導や勧告ができない状態になっていたことが25日、分かった。新たな規定を加えた際に、付則の修…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(3)

イ 具体例 (ア) 消費者保護条例 具体的な例として、まず消費者保護条例を取り上げる。 消費者保護条例に規定する内容については、猪野積『条例と規則(2)』(P91)において、次のように類型化されている。 ① 事業者規制 ・ 危害発生の防止(欠陥商品、不安商…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(2)

(2) 「私法秩序の形成等に関する事項」と条例制定権 ア 概説 前回取り上げた条例制定権が及ばないとされた成田教授の類型化のうち、「①国全体にわたって画一的な制度によることが好ましいと思われるもの」と「④その他、対象たる事項が一地方の利害にとどまら…

条例制定権の範囲と限界~国及び他の自治体の事務との関係(1)

<「自治体法制執務雑感」関連記事> 2008年2月29日付け記事「都道府県条例に市町村の責務を規定することについて」 2014年10月25日付け記事「続・都道府県条例に市町村の責務を規定することについて」 1 概説 自治体の条例制定に関する基本的な事項として…

規制手法~届出制(下)

2 当該行為自体が住民の生命、財産等に影響を及ぼすかどうか分からない場合 当該行為自体が住民の生命、財産等に影響を及ぼすかどうか分からない場合に、その安全性を確認するために届出制を設けることがある。 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法…

規制手法~届出制(上)

条例で規制手法を定める場合には、その性質から許可制よりも届出制を規定する場合が多いと思われる。そこで、旧ブログの記事で記載した届出制に関する記事のうち、どのような場合に届出制を用いるべきかという点に絞って、現時点での考えをまとめておくこと…

条例立案時における憲法適合性及び法律適合性への配慮(4)

4 まとめ 今回、条例の憲法適合性及び法律適合性について風営法に関する判例を題材にして取り上げてみた。 同一の法律に基づく複数の判例を取り上げたのは、判例によって異なった判断がなされているかどうかを確認するのが主眼であった。 この点、条例の憲…

条例立案時における憲法適合性及び法律適合性への配慮(3)

(2) パチンコ店の規制 パチンコ店を規制する条例については、判例①は違法、判例②は適法と結論を異にしているが、判決が述べている内容は、次のとおりである。 区分 条例と風営法の目的 風営法が条例による独自の規制を許容しているか 条例の規制方法等 判例①…

条例立案時における憲法適合性及び法律適合性への配慮(2)

3 法律適合性について (1) ラブホテルの規制 今回取り上げる判例は、風営法との関係が問題となることで共通している。条例及び風営法の規制対象と規制内容、そして判例の結論がどのようになっているかは、次のとおりである。 区分 規制対象 風営法の規制内…

条例立案時における憲法適合性及び法律適合性への配慮(1)

1 はじめに 政策法務関係の文献を見ると、条例の憲法適合性及び法律適合性について記載されていることが多い。しかし、それらの記載が条例立案時にどの程度役立つのかは疑問を感じることがある。 そこで、風営法との関係が問題となる次の3つの判例を取り上…

新型コロナウイルス対策条例を制定するのであれば

新型コロナウイルス対策については、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言は解除されたものの、東京都を中心に感染者が増加し、経済活動との両立が模索されている中でどのように行っていくのか難しい局面に入っているように思われる。 自…

「チバニアン」研究目的のための立入りについて定める条例

2020年1月17日、IUGS(国際地質科学連合)の理事会において、千葉セクション(市原市田淵の地磁気逆転地層)が前期ー中期更新世地質年代境界のGSSP(国際境界模式地)に決定され、約77万4千年前~約12万9千年前(新生代第四紀更新世中期)の地質年代の名称が…

法律と条例の関係~高知市普通河川等管理条例事件判決から

法律と条例の関係について判断した判例として、最高裁昭和53年12月21日判決(高知市普通河川等管理条例事件判決)がある。 この判決は、普通河川について、河川法より厳しい規制を行うことを違法とした判決である。違法とした理由は、普通河川であっても、適…

条例を制定する意義

自治体が住民に対し義務を課し、又は権利を制限するためには、条例によらなければならない(地方自治法第14条第2項)。したがって、現在は、権利義務規制を伴わない条例が増えているが、条例を制定する意義は、何と言っても権利義務規制を行うところにある…

条例の分類(下)

2 法律との関係による分類 条例について考える場合、法律との関係を抜きにすることはできない。第一次地方分権前は、公共事務条例、委任事務条例、行政事務条例の3つに分類することが一般的であった(例えば秋田周『条例と規則』P88~)。第一次地方分権後…

条例の分類(上)

1 条例の内容による分類 条例の分類は、例規集においては他の規則等の例規とともに行政分野別になされているのが通例である。例えば兼子仁ほか『政策法務辞典』(P110~)では、まちづくり、福祉、安全・安心、地域環境、地域経済、人権・コンプライアンス…