自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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許可制が許容される基準

 今頃何を言っているのだという感じがするだろうが、職業について許可制を用いることが許容される基準として、薬事法距離制限違憲判決(最高裁判所昭和50年4月30日大法廷判決)*1が次のように判断している。

 職業の許可制は、法定の条件をみたし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであつて、右に述べたように職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。このような許可制が設けられる理由は多種多様で、それが憲法上是認されるかどうかも一律の基準をもつて論じがたいことはさきに述べたとおりであるが、一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。

 届出制であっても、行政処分・罰則をリンクさせる手法をとれば、効果としては許可制とあまり変わらないようなものになると言われているが、許可制について上記のように考えるのであれば、法的な意味は両者は随分違ったものであることになるのだろう。

(参考記事)

・2022年1月14日付け記事『許可制と届出制

・2020年12月4日付け記事『規制手法~届出制(上)

・2020年12月18日付け記事『規制手法~届出制(下)

*1:薬事法距離制限違憲判決は、立法事実に詳細な検討を加えて違憲の結論を導き出したものとして、一般に評価されている(野中俊彦ほか『憲法Ⅱ(第5版)』P304)。