条例で規制手法を定める場合には、その性質から許可制よりも届出制を規定する場合が多いと思われる。そこで、旧ブログの記事で記載した届出制に関する記事のうち、どのような場合に届出制を用いるべきかという点に絞って、現時点での考えをまとめておくことにする。
- 2007年1月20日付け記事「届出制とその規制手法について(その1)」
- 2007年1月21日付け記事「届出制とその規制手法について(その2)」
一般的に許可制を採るか届出制を採るかは、強い規制をするべきか、弱い規制で足りるのかといった判断に基づいていると言える*1。
しかし、届出制に行政処分・罰則をリンクさせる立法例があるが、この場合には効果としては許可制とあまり変わらないようなものになってくる。例えば、公害法の多くに届出制が採用されていることについて、大塚直『環境法(第2版)』(P264~)には、次のように記載されている。
規制の態様として、許可制の方が厳しいと一般的には考えられるが、届出制といっても、届け出さえすれば直ちに行為を適法にすることができるわけではないことにも注意する必要がある。例えば、大防法では、届け出られたばい煙発生施設が排出基準に適合しないと都道府県知事が認めるときは、その計画の変更や廃止を命じうることになっている(9条)。このような事後変更命令付きの届出制は、他の環境法にもみられるが、この種の届出制と許可制とは、届出後一定期間内に命令がなされない限り、申請者が基準を超える行為を適法になしうる点のみが異なるにすぎないわけである。
そうすると、許可制を採る場合と届出制を採る場合のメルクマールはどこに見出すべきであろうか。阿部泰隆『行政の法システム(上)』(P80)は「許可制ほど強力な手法をおくことが適切でないとか、許認可を付与するかどうかの判断が困難であるとか、許認可事務が膨大になるとかしてその運用が困難ある場合」に届出制が設けられるとする*2。
ここでは、法令で具体的にどのような場合に届出制が採られているか見ていくことにする。
1 当該行為自体では、住民の生命、財産等に大きな影響を及ぼさない場合
公害法における規制は、届出制が採用されていることが多い。例えば、水質汚濁防止法は、特定施設等を設置しようとするときは都道府県知事に届け出なければならないとしている(同法第5条)。その届出は、当該施設を設置する60日前に届出をさせることとし(同法第9条第1項)、排水基準に適合しないと認めるときなどには都道府県知事は計画変更命令等を行うことができ(同法第8条)、当該命令に従わない場合には罰則を科すこととしている(同法第30条)。
大気汚染防止法も基本的には同様の手法を用いているが、このように公害法において届出制が採用されているのは、事業活動を尊重するという趣旨もあると思うが、その者の行為のみでは、住民の生命や健康に被害が生じすることはないからであると考えることができる。
このように、一定の規制は必要ではあるものの、当該行為自体では、住民の生命、財産等に大きな影響を及ぼさないような場合には、届出制を用いられている。