2 当該行為自体が住民の生命、財産等に影響を及ぼすかどうか分からない場合
当該行為自体が住民の生命、財産等に影響を及ぼすかどうか分からない場合に、その安全性を確認するために届出制を設けることがある。
「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」では、新規化学物質について届出をさせ、PCB類似の性状を有していないかどうか審査し、その安全性を確認した後でないと、その新規化学物質の製造又は輸入をすることができないという制度を設けている*1。
3 当該行為を一定の方向に誘導しようとする場合
届出制を採用している法律に景観法がある。この景観法の仕組みに関しては、衆議院国土交通委員会において、竹歳国土交通省都市・地域整備局長の次のような答弁がある。
このさまざまな新しい仕組みというものは、建築物の建築等の行為自体をとめるものではございませんで、デザインとか色彩について、地域住民の意見を反映させながら策定される地域ごとのルールに適合させていこう、こういうものであるわけでございます。
景観法は、建築物の建築行為自体を規制するのではなく、そのデザインや色彩を一定の方向に誘導するものであるが、このような場合には届出制が用いられやすいと思われる。
4 行政として実体は把握したいが、お墨付きを与えたくない場合
風営法において風俗関連営業を許可制ではなく届出制にしたのは、実態把握の必要はあるものの、公的機関が認めた業種とされたくないためであるとされている*2*3。
以上、届出制が用いられている場面を取り上げてみたが、届出制を用いるのは、その対象行為が許可制を採るほどのものではないと判断する場合ということになる。そして、届出制に行政処分をリンクさせるシステムは、効果としては許可制とあまり変わらないとしても、当然その全ての行為に行政処分を課すわけではなく、その必要があるもののみに課すわけであるから、許可制よりも柔軟な対応が可能になるというメリットがあるだろう*4。