自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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許可と登録(2)

2 許可又は登録を拒否する場合

 一般的に許可の場合は、行政庁の裁量が広く、登録の場合は、それが狭いとされているが、具体的にはどのようになっているのだろうか、法令の規定を見ていくことにする。

 (1) 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」の例

 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」では、登録の場合は、第44条第1項が「都道府県知事は、前条の規定による申請書の提出があったときは、次条第1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を引取業者登録簿に登録しなければならない」と規定しているため、登録を拒否できるのは第45条第1項各号に該当する場合に限られている。これに対し、許可の場合は、第62条が「都道府県知事は、第60条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」と規定しているため、条文の文言だけを見れば、第62条で規定している場合以外の場合でも許可しないことができることになり、許可又は登録をすることに関して、許可の方が行政庁の裁量が広いことは明らかである。

 では、許可又は登録に関し法律で定める拒否事由についての違いはあるのだろうか。それを定める規定は、それぞれ次のとおりである。

許可(解体業の許可) 登録(引取業者の登録)
(許可の基準)
第62条 都道府県知事は、第60条第1項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
(1) その事業の用に供する施設及び解体業許可申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして主務省令で定める基準に適合するものであること。
(2) 解体業許可申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として主務省令で定める者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ロ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ この法律、廃棄物処理法、浄化槽法(昭和58年法律第43号)その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。第32条の3第7項及び第32条の11第1項を除く。)の規定に違反し、又は刑法(明治40年法律第45号)第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律(大正15年法律第60号)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ 第66条(第72条において読み替えて準用する場合を含む。)、廃棄物処理法第7条の4若しくは第14条の3の2(廃棄物処理法第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。)又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第15条の規定による通知があった日前60日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
ホ その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
ヘ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」という。)
ト 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)がイからヘまでのいずれかに該当するもの
チ 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイからヘまでのいずれかに該当する者のあるもの
リ 法人で暴力団員等がその事業活動を支配するもの
ヌ 個人で政令で定める使用人のうちにイからヘまでのいずれかに該当する者のあるもの
2 (略)
(登録の拒否)
第45条 都道府県知事は、引取業登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、申請書に記載された第43条第1項第5号に掲げる事項が使用済自動車に搭載されている特定エアコンディショナーからのフロン類の適正かつ確実な回収の実施の確保に支障を及ぼすおそれがないものとして主務省令で定める基準に適合していないと認めるとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
(1) 心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として主務省令で定める者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
(2) この法律、フロン類法若しくは廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)又はこれらの法律に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
(3) 第51条第1項の規定により登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
(4) 引取業者で法人であるものが第51条第1項の規定により登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30以内にその引取業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
(5) 第51条第1項の規定により事業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
(6) 引取業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。第56条第1項第6号において同じ。)が前各号のいずれかに該当するもの
(7) 法人でその役員のうちに第1号から第5号までのいずれかに該当する者があるもの
2 (略)

 上記の法律の文言だけを見ると、許可と登録とで大きな違いは見られない。ただし、具体的な条件等を省令に委任している部分があるため、それについては、次回に見ていくことにする。