自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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議長の報酬を減額する条例

“職にとどまる議長” 報酬を減額する条例案可決 東京 墨田区

 (略)

 墨田区議会の木内清議長は、去年5月に議長に就任しましたが、区議会の慣例として長年、踏襲されてきた原則1年を過ぎたあとも議長の職にとどまっています。

 区議会では、ことし6月に不信任の動議が、さらに9月には辞職勧告決議が可決されましたが、いずれも法的な拘束力はなく、議長職はそのまま続けているものの、本会議では議事の進行の大部分を副議長が担う事態となっています。

 このため30日の本会議では、議長としての職務を遂行できていないとして、議員の9割に当たる29人から、議長の報酬を減額し、ほかの議員と同じ金額にする条例案が提出されました。

 佐藤篤議員は「仕事をせずに不適切に高い報酬を受け取る議長に、住民の怒りの声は沸点に達している。民主主義を無視した暴挙に抗議し、住民の声に応えたい」と提案理由を説明しました。

 そして、採決の結果、条例案は賛成多数で可決されました。

 これにより、月額91万3000円だった議長の報酬は、30万円余り減額され、ほかの議員と同額の60万7000円となりました。

 本会議のあと、木内議長は記者団に対し「議会に出席しようにも、自民党会派からの動きで私に仕事をさせようとしない。それ以外の職務はしっかりと行っている。今後も議長は続けていく」などと述べ、議長の職にとどまる意向を改めて示しました。

NHK 2022年11月30日配信

この条例の条文は、次のとおりである。

   墨田区議会議員の議員報酬の特例に関する条例

 墨田区議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例(昭和31年墨田区条例第17号)別表の規定にかかわらず、議長の議員報酬の月額は、同表に規定するその他の議員の議員報酬の月額に相当する額とする。

 一部の自治体において、議員が本来行うべき活動を行っていない議員に対し、一定の額の報酬を減額する条例案を制定する例があるが(2021年10月1日付け記事「議員報酬削減条例」参照)、考え方としては、そうした例を参考にしているのだろう。

 しかし、報酬を減額する事実はどのようなもので、それに対しどれくらいの額を減額するのかを明示せずに、単純に一般の議員と同額とすることとしたため、現在の議長個人がその職責を果たしていないのだという主観的な評価に基づいた条例となってしまい、そのため懲罰的な意味合いも感じることとなり、問題がある条例になってしまっていると思う。

 なお、意図したものかどうか分からないが、上記の条例が適用になる議長は、どの時点における者であるか特定していないので、条例を正当化する理屈として、墨田区における議長は、一般の議員と同等の職に過ぎないのだということを一応言うことができる。しかし、副議長や委員会委員長は、一般の議員より高額な報酬を得ているので、論理的な考え方ではない。