自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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真剣な交際以外を処罰?~青少年健全育成条例の改正

 大阪府が検討している青少年健全育成条例の改正が話題になっている。大阪府が1月15日まで行っていた意見募集の資料によると、次の改正を予定している。

<現行規定>

第39条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。

  (2) 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 <改正後に規制の対象となる行為>

  • 行為者が青少年を威迫し、欺き、又は困惑させたうえで行う性行為又はわいせつな行為に加え、青少年の未成熟に乗じた不当な手段(困惑状態にあることに乗じる等)により行う性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。
  • 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象としてのみ扱っていると認められる性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。青少年から行為者に働きかけて当該行為に至った場合も同様です。
  • 真摯な交際関係における性行為又はわいせつな行為は規制対象ではありません。

 大阪府では、他県で用いている淫行といった用語を用いていないことにより生じている不都合を解消することを目的としているのだろうが、次のように、この改正がなされると真剣な交際以外は条例違反となるかのような報道がなされている。

そもそも18歳未満との“真剣交際”ってナニ?

 大阪府が18歳未満とのわいせつ行為に関する条例を改正する動きを見せています。「真剣な交際」以外は違反となりますが、そもそも「真剣な交際」とはどのような交際なのでしょうか。

(中略)

 人によって定義の違う「真剣交際」。どんな要素が条例に抵触しているか否かの基準になるのでしょうか。

 大阪弁護士会所属・奥村徹弁護士:「年齢差が近ければ、例えば17歳と18歳だと真剣交際になる傾向は大きい。“性行為に至る過程”“さっき会ってそのままホテル”一番みだらな性行為になりやすい。『ちょっと付き合おう』ということで、とりあえず喫茶店に入って次は美術館・博物館・動物園とかドライブ、延長線上で交際が深まってホテルに行ったというのは真摯な交際につながりやすい」「(Q.総合的にみられる?)そうです。『保護者の承諾があったらいいのか』という話がある。保護者の承諾はひっくり返されることがあるので、あんまりあてにならない。保護者の承諾っていうのは一つの要素」

テレビ朝日ニュース 2月3日配信

 しかし、真剣な交際は条例違反とならない十分条件に過ぎないのであって、真剣な交際以外が全て違反となるということまでは資料からは読み取れない。実際、上記の奥村弁護士の見解も、真剣な交際について説明しているわけではなく、どのような形態の行為であれば条例上処罰されないかということを説明しているだけのように思われる。

 ところで、大阪府は、どのような条文にするつもりなのか気になるところだが、上記の大阪府の資料からすると、一つの案として第39条に第3号として次のように規定することが考えられる。

前号に掲げるもののほか、専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年の知慮浅薄に乗じて当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 参考にした条文は、次の刑法の規定である。

(監護者わいせつ及び監護者性交等)

第179条 (略)

2 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

(準詐欺)

第248条 未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

 刑法の準詐欺罪の規定を参考にするのは、筋違いなのかもしれないが。