(2) 臨時的・一時的なもの
要綱設置の私的諮問機関について裁判所により厳しい判断がなされている中で、条例によらない会議体的なものが認められる場合はあるのか、触れてみることとしたい。
学説では、臨時的・一時的なものであれば要綱設置でもよいという見解がある*1。附属機関条例主義の意図が附属機関の濫設防止ということであれば、臨時的・一時的なものは「機関」ではないと考えるのは一つの解釈として十分成り立ちうると思う。
しかし、行政実例は否定しており*2、法第138条の4第3項及び第202条の3の文理からしても、裁判所にこの主張を認めてもらうことを期待するのは危険だろう。
そこで、「附属機関設置条例」において、臨時的・一時的なものは執行機関限りで設置できる旨の規定を置くことが考えられる。
(3) 独任制の機関
平成27年6月25日大阪高裁判決は、独任制の機関についても附属機関となり得るものがあると判断しているが、その理由は、地方自治法に基づく自治紛争処理委員が明文で附属機関とされていることに求めている*3。
しかし、判決でも触れているように、自治紛争処理委員は、地方自治法251条の2第10項の規定により一部の職務を合議により行うものとされており*4、その合議により行う職務は、自治紛争処理委員として本質的な職務であることからしても、独任制の機関として活動する側面があることをもって附属機関は独任制でも構わないとする判断には直ちにはならないだろう。
むしろ、調査を行うことを職務とする専門委員は条例による必要はないことからすると(地方自治法第174条参照)、附属機関は、あくまでも合議制の機関(組織)であり、その点を条例によるべきかどうかのメルクマールにしていると考えるべきである。このことは、法律では自治体の附属機関を「審議会その他の合議制の機関」(「がん登録等の推進に関する法律」 (平成25年法律第111号)第18条第2項等参照)と表記していることからも窺うことができる。
*2:昭和27.11.19自行行発第139号行政課長回答
*3:地方自治法第138条の4第3項本文は「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」としている。
*4:地方自治法251条の2第10項の規定は、「第3項の規定による調停案の作成及びその要旨の公表についての決定、第5項の規定による調停の打切りについての決定並びに事件の要点及び調停の経過の公表についての決定並びに前項の規定による出頭、陳述及び記録の提出の求めについての決定は、自治紛争処理委員の合議によるものとする」という規定である。