自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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附属機関(4)

6 附属機関であるか検討を要する機関

 (1) 協議会

 近年、利害調整等の手法として、法律で「協議会」という名称の機関を設置することが定められることが多くなっている(大橋洋一道路建設と史跡保護―協議会の機能に関する一考察」『行政法研究第16号』参照)*1

 例えば、次の「都市の低炭素化の促進に関する法律」第8条の規定のとおりである。

(低炭素まちづくり協議会)

第8条 市町村は、低炭素まちづくり計画の作成に関する協議及び低炭素まちづくり計画の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。

2 協議会は、次に掲げる者をもって構成する。

(1) 低炭素まちづくり計画を作成しようとする市町村

(2) 低炭素まちづくり計画及びその実施に関し密接な関係を有する者

(3) その他当該市町村が必要と認める者

3 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。

4 前3項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

 この「協議会」を附属機関と考えるべきかについて、前掲論文(P44~)は、同論文で取り上げた協議会について「恒常的な性格のものではなく、政策提言を期待された組織であった点に着目して、条例による設置までは要求されていないと解釈することが可能である。なお、今後、協議会等の活用や活性化が期待されることを考えると、上記の解釈論とは別に、上記自治法規定*2は、柔軟化と明確化に向けて、立法論として一定の修正が課題となろう」としている。

 しかし、「協議会」が、上記のとおり関係者の利害調整等を行うため、文字通り協議を行うためのものであり、意見集約を行わないのであれば、附属機関と考えないことも可能と思われる。例えば、「空家等対策の推進に関する特別措置法」第7条は、次のとおり規定している。

(協議会)

第7条 市町村は、空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関する協議を行うための協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。

2 協議会は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)のほか、地域住民、市町村の議会の議員、法務、不動産、建築、福祉、文化等に関する学識経験者その他の市町村長が必要と認める者をもって構成する。

3 前2項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

 この協議会は、空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関する協議を行うことを所掌するので、必ずしも附属機関とする必要はないと思うが、北村喜宣教授は、附属機関と解されるとしている(北村喜宣『空き家問題解決のための政策法務』(P170))。そうすると、この協議会は、任意設置であるため設置するのであれば必ず条例で定める必要があることからすると、その運営に関する事項は、協議会が定めることとしているが(第7条第3項)、立法論的にはその設置に関する事項も含めて条例委任とすべきであっただろう。

 以上のように、協議会の性格は明確でないのであるが、違法性に疑義を持たれないようにするのであれば、協議会を附属機関と扱うべきということにはなる。

 ただし、「協議会」という名称を付されたものであっても、実質的には審議会的な機関であり、附属機関と解すべきものもある。例えば、次の「東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律」に基づく住所移転者協議会は、その例だろう。

(住所移転者協議会)

第12条 指定市町村は、条例で定めるところにより、住所移転者協議会を置くことができる。

2 住所移転者協議会の構成員は、特定住所移転者のうちから、指定市町村の長が選任する。

3 住所移転者協議会の構成員の任期は、条例で定める期間とする。

4 地方自治法(昭和22年法律第67号)第203条の2第1項の規定にかかわらず、住所移転者協議会の構成員には報酬を支給しないこととすることができる。

5 住所移転者協議会は、前条第一項から第三項までに定める施策に関する事項のうち、指定市町村の長その他の機関により諮問されたもの又は必要と認めるものについて、審議し、指定市町村の長その他の機関に意見を述べることができる。

6 指定市町村の長その他の機関は、前項の意見を勘案し、必要があると認めるときは、適切な措置を講じなければならない。

7 前各項に定めるもののほか、住所移転者協議会の構成員の定数その他の住所移転者協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。

   (2) 独任制的な機関

 独任制的な機関を法律により置くこととされ、必要な事項を条例で定めることとしているものがある。例えば、次のとおり保健師助産師看護師法により都道府県に置くこととされる准看護師試験委員がそれである。

第25条 准看護師試験の実施に関する事務をつかさどらせるために、都道府県に准看護師試験委員を置く。

2 准看護師試験委員に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。

 このような機関も附属機関と解する例があるが、合議制の機関でない限り、附属機関と解する必要はないだろう。例えば、国においては、厚生労働省保健師助産師看護師試験委員を置くこととされているが(保健師助産師看護師法第23条)、これは附属機関の扱いとはされていない(厚生労働省設置法第6条参照)。

*1:前掲論文(P2~)では、2000年以降に制定された法律のうち、77の法律で協議会に関して規定が置かれているとするが、現在ではさらに多くなっていると思われる。

*2:地方自治法第138条の4第3項の規定である。