自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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執行機関(14)

 (3) 出先機関の名称に係る必置規制

 法定の出先機関の中には、その名称について規制がなされているものがある。その例としてよく挙げられるのは保健所であり、一般的には保健所は「保健所」という名称を必ず付さなければならないものと考えられている。

 しかし、そのことは、条文上では必ずしも明らかではない。保健所の設置を義務付けている地域保健法の規定は、次のとおりである。

第5条 保健所は、都道府県、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市、同法第252条の22第1項の中核市その他の政令で定める市又は特別区が、これを設置する。

② 都道府県は、前項の規定により保健所を設置する場合においては、保健医療に係る施策と社会福祉に係る施策との有機的な連携を図るため、医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第2項第14号に規定する区域及び介護保険法(平成9年法律第123号)第118条第2項第1号に規定する区域を参酌して、保健所の所管区域を設定しなければならない。

 ちなみに、福祉事務所については、名称に関する規制はなされていない。福祉事務所の設置に関する規定である社会福祉法の規定は、次のとおりである。

 (設置)

第14条 都道府県及び市(特別区を含む。以下同じ。)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければならない。

2 都道府県及び市は、その区域(都道府県にあつては、市及び福祉に関する事務所を設ける町村の区域を除く。)をいずれかの福祉に関する事務所の所管区域としなければならない。

3 町村は、条例で、その区域を所管区域とする福祉に関する事務所を設置することができる。

4 町村は、必要がある場合には、地方自治法の規定により一部事務組合又は広域連合を設けて、前項の事務所を設置することができる。この場合には、当該一部事務組合又は広域連合内の町村の区域をもつて、事務所の所管区域とする。

5 都道府県の設置する福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法及び母子及び父子並びに寡婦福祉法に定める援護又は育成の措置に関する事務のうち都道府県が処理することとされているものをつかさどるところとする。

6 市町村の設置する福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務のうち市町村が処理することとされているもの(政令で定めるものを除く。)をつかさどるところとする。

7 町村の福祉に関する事務所の設置又は廃止の時期は、会計年度の始期又は終期でなければならない。

8 町村は、福祉に関する事務所を設置し、又は廃止するには、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。

 要は、「〇〇所」となっていればその名称を付す必要があり、「〇〇に関する事務所」となっていれば名称に係る規制はないということなのだろう。しかし、名称についても規制を及ぼすのであれば、家畜保健衛生所について家畜保健衛生所法第1条第3項が「家畜保健衛生所には、その名称中に『家畜保健衛生所』という文字を用いなければならない」と規定しているように、明確に規定するのが本来のあるべき姿だろう。

(このシリーズ終わり)