自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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附属機関(5)

7 いわゆる私的諮問機関について

 (1) 附属機関と私的諮問機関との違い

 要綱等によりいわゆる私的諮問機関*1が設置されることがあるが、これと附属機関との違いが不明確な面がある。

 附属機関と私的諮問機関の形式的な違いは、委員へ支払う報酬の科目が違うとか(前者は報酬、後者は報償費)、名称が違うとか(地方自治法の規定からすると私的諮問機関を「審議会」とか「審査会」という名称にするのは適当でないので、例えば「委員会」とするとか)言われる。

 しかし、その本質的な違いは、組織であるかどうかという点に求めるべきであろう。例えば、執行機関が意見を求めた場合、附属機関は、組織として意思決定を行うのであるが、私的諮問機関は、機関として意思決定をするわけではなく、長などの執行機関が委員個々の意見をそのまま聴く場ということになり、その委員が集まっている場を単に「○○委員会」と称しているだけということになろう。したがって、附属機関の設置条例等には、議決の方法について定めておく必要があるが、私的諮問機関の設置要綱等には、そのような定めは必要ないし、むしろあってはいけないことになる。

 国においては、平成11年4月27日に閣議決定された「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」の別紙4に「懇談会等行政運営上の会合の開催に関する指針」(以下次回も含めて「国の指針」という。)として、次のように定められている。

   懇談会等行政運営上の会合の開催に関する指針

 懇談会等行政運営上の会合(*)については、今後次のように扱うものとする。

1.運営の考え方

 懇談会等行政運営上の会合については、審議会等とは異なりあくまでも行政運営上の意見交換、懇談等の場として性格付けられるものであることに留意した上、審議会等の公開に係る措置に準ずるとともに、2.の基準により、その開催及び運営の適正を確保した上で、意見聴取の場として利用するものとする。

2.運営の原則

 1.の考え方に沿って、当該府省の施策に関する審議等を行う行政機関との誤解を避けるとともに自由活発な意見聴取を行うため、以下の点に留意して運営するものとする。

 (1) 開催根拠

 省令、訓令等を根拠としては開催しないものとする。

 また、懇談会等に関するいかなる文書においても、当該懇談会等を「設置する」等の恒常的な組織であるとの誤解を招く表現を用いないものとする。

 (2) 名称

 審議会、協議会、審査会、調査会又は委員会の名称を用いないものとする。

 (3) 会合の運営方法

 懇談会等の定員及び議決方法に関する議事手続を定めないものとする。

 また、聴取した意見については、答申、意見書等合議体としての結論と受け取られるような呼称を付さないものとする。

(*)行政運営上の参考に資するため、大臣等の決裁を経て、大臣等が行政機関職員以外の有識者等の参集を求める会合であって、同一名称の下に、同一者に、複数回、継続して参集を求めることを予定しているもの

 国の私的諮問機関の概要情報として、次のようなものが所管省庁のホームページに掲載されているが、このような形で決裁を得て開催するのであろう。

独占禁止法基本問題懇談会」の開催について(平成17年7月1日 内閣官房長官決定、同年11月1日一部改定)

1.趣旨

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年4月27日法律第35号)の附則の規定に鑑み、独占禁止法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について必要な検討を行うため、内閣官房長官が高い識見を有する人々の参集を求め、「独占禁止法基本問題懇談会」(以下「懇談会」という。)を開催する。

2.構成員

 1.懇談会は、別紙(別紙略)に掲げる有識者により構成し、内閣官房長官が開催する。

 2.内閣官房長官は、有識者の中から懇談会の座長を依頼する。

 3.懇談会は、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。

3.開催期間

 懇談会は、おおむね月1回の頻度で、おおむね2年間、開催する。

4.庶務

 懇談会の庶務は、内閣府大臣官房において処理する。

内閣府ホームページ:http://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/index.html

 

環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本方針の作成に向けた懇談会について(平成16年4月14日環境大臣決定、文部科学大臣決定)

1.趣旨

 「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」に基づく基本方針の案を環境大臣及び文部科学大臣が作成するに当たっては、同法において「広く一般の意見を聴くこと」と定められている。

 そこで、パブリックコメントの募集などを通じて、広く意見を聴くととともに、有識者や環境教育等を行う者等で構成する「環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本方針の作成に向けた懇談会」(以下、「懇談会」という。)を開催し、専門的見地からご議論いただき、環境大臣及び文部科学大臣が基本方針の案を作成する際の参考にする。

2.検討事項

 (1) 環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する基本的な事項

 (2) 環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関し政府が実施すべき施策に関する基本的な方針

 (3) その他環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する重要な事項

3.組織等

 (1) 懇談会

  [1] 懇談会は、上記検討事項に関連する学識経験者や環境教育に関する者等のうちから、環境大臣及び文部科学大臣が委嘱する者をもって構成する(別紙(別紙略)参照)。

  [2] 懇談会に座長をおき、懇談会委員の互選によってこれを定める。座長は懇談会の会務を総理する。

 (2) その他

  [1] 懇談会は、必要に応じて懇談会委員以外の学識経験者、環境教育に関する者等の出席を求めることができる。

  [2] 懇談会の庶務は、環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室及び文部科学省生涯学習政策局社会教育課が共同して処理する。

  [3] 懇談会は、原則として公開とする。

4.期間

 平成16年4月14日から基本方針の閣議決定を行う日までとする。

環境庁ホームページ:http://www.env.go.jp/council/25kyouiku/gaiyo25.html

 自治体においても、国の指針等を参考にして取扱いを定めているところもあり、それは適切な対応だろう。

 

*1:なぜ「私的」諮問機関というかについて、西川明子「審議会等・私的諮問機関の現状と論点」『レファレンス 平成19年5月号』には、「『私的』とは、国家行政組織法第8条にいう審議会等に当たらず、「私人」としての委員個人の意見を聞くための諮問機関であるという意味である」と記載されている。