自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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第2次分権改革の評価(4)

 (2) 法令の表現が適切とは思われないもの

 「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行に伴う国土交通省関係政令等の整備等に関する政令平成23年政令第363号)。以下「整備政令」という。)」により都市計画法施行令及び「風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令」(以下「風致政令」という。)が改正され、10ha以上の風致地区に関する都市計画決定権限が、2以上の市町村の区域にわたるものを除き、都道府県から市町村に移譲され(都市計画法施行令第9条第1項第1号)、その風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定権限についても同様に移譲された(風致政令第2条)。

 この改正は、整備政令第14条でなされ、平成24年4月1日から施行されているが、整備政令の附則に次の経過規定が置かれている。

風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令の一部改正に伴う経過措置)

第2条 第14条の規定の施行の際現に効力を有する都市計画法第58条第1項の規定に基づく条例(都道府県が定めたものに限る。以下この条において「現条例」という。)は、第14条の規定の施行の日から起算して3年を経過する日までの間は、同条の規定による改正後の風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令(以下この条において「新令」という。)で定める基準に従ったものとみなす。ただし、その日以前に、都道府県が新令で定める基準に従った条例の制定及び施行をしたときは現条例のうち面積が10ヘクタール以上の風致地区(2以上の市町村(都の特別区を含む。以下この条において同じ。)の区域にわたるものに限る。)に係る部分、市町村が新令で定める基準に従った条例の制定及び施行をしたときは現条例のうち当該市町村の区域における面積が10ヘクタール以上の風致地区に係る部分については、それぞれ当該新令で定める基準に従った条例の施行の日以後は、この限りでない。

 今回の改正で、なぜこのような経過規定が置かれているか、少し見ただけではよく分からない。国土交通省は、都市局都市計画課長通知で次のように説明している。

 第2次一括法整備等政令のうち風致政令風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令をいう。)*1の改正に係る規定の施行に伴い、経過措置として当該規定の施行後3年間に限って、都道府県及び市町村において改正後の風致政令の基準に従った既存の風致条例の改正又は新たな風致条例の制定及びそれらの条例の施行がなされるまでの間は、当該規定の施行の際現に効力を有する都道府県風致条例(都道府県の風致地区内における建築等の規制に係る条例をいう。)*2……を改正後の風致政令の基準に従ったものとみなし、平成24年4月1日以降も継続して適用することとしています。

 このことを表すのに「……現条例……は、……新令……で定める基準に従ったものとみなす」としているわけであるが、旧風致政令で定める基準と新風致政令で定める基準の違いは、従来都道府県の条例で行っていた10ha以上の風致地区内における規制を、2以上の市町村の区域にわたるものを除き、市町村の条例で行うこととするということだけである。つまり、条例で定める規制の内容自体は特に改正する必要はないのに、このような表現をしているので何を言っているのかよく分からないのである。

 次のように端的に「都道府県の条例の適用がある」とすればよいのではないだろうか。

 面積が10ヘクタール以上の風致地区(2以上の市町村の区域にわたるものを除く。)については、第14条の規定の施行の日から起算して3年を経過する日までの期間内において、市町村が都市計画法第58条第1項の規定に基づく条例の制定及び施行をするまでの間は、第14条の規定の施行の際現に効力を有する都市計画法第58条第1項の規定に基づき都道府県が定めた条例の適用があるものとする。

  次のように改正前の風致政令第2条の規定の効力を生かすだけでも十分だろう。 

第14条の規定の施行の際現に存する面積が10ヘクタール以上の風致地区(2以上の市町村の区域にわたるものを除く。)については、同条の規定の施行の日から起算して3年を経過する日(その日前に市町村が当該風致地区に係る都市計画法第58条第1項の規定に基づく条例の制定及び施行をしたときは、当該条例の施行の日)までの間は、第14条の規定による改正後の風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令第2条の規定は、なおその効力を有する。 

*1:管理人追記

*2:管理人注記