自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

附属機関(1)

 今回から10回にわたり、附属機関について取り上げる。旧ブログでは、「自治体の組織」という記事の中で、特に附属機関が条例事項とされている意義を取り上げたが、近年は、要綱設置の会議体が条例設置の附属機関とすべきとして違法とする下級審判決が出されていることについて取り上げてきた。そうした一連の記事をまとめておこうとするものである。

 なお、執行機関的な附属機関を設けることができるかについて、碓井光明教授の論文に接し、見解を改めた点もある。

根拠規定

普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。」(地方自治法第138条の4第3項)

自治体法制執務雑感」関連記事

  • 2007年4月21日付け記事「自治体の組織(1)~はじめに」
  • 2007年5月19日付け記事「自治体の組織(8)~附属機関(その1)」
  • 2007年5月20日付け記事「自治体の組織(8)~附属機関(その2)」
  • 2008年2月8日付け記事「私的諮問機関(上)」
  • 2008年2月9日付け記事「私的諮問機関(下)」
  • 2013年7月20日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(1)」
  • 2013年7月27日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(2)」
  • 2013年8月3日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(3)」
  • 2013年8月10日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(4)」
  • 2013年8月17日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(5)」
  • 2018年8月17日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(1)」
  • 2018年8月23日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(2)」
  • 2018年8月31日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(3)」
  • 2018年9月7日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(4)」
  • 2018年9月14日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(5)」
  • 2018年9月21日付け記事「いわゆる私的諮問機関に関する判例について(その2)(6)」

 1 附属機関のメルクマール

 附属機関は、担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関である(地方自治法第202条の3第1項)。これらの意義は、次のとおりとされている(昭和27年8月行政資料)。

  • 調停:第三者が紛争の当事者間に立って、当事者の互譲によって事件の妥当な解決をはかるように努力することをいう。
  • 審査:附属機関が一定のことがらについて結論を導き出すために、その内容をよく調べることをいう。
  • 審議:執行機関の諮問に応じて調べ論議することをいう。
  • 調査:事実を調べることをいう。

 行政実例では、附属機関は、上記のための機関に限られるとされているが(昭和30年3月18日付け自丁行発第47号自治省行政課長回答)、審議のための機関が附属機関とされる以上、合議制の機関であれば附属機関に当たると考えて問題ないだろう。法律で附属機関の表記として「審議会その他の合議制の機関」とされているのもそれも表している*1

 2 附属機関を設置する条例の形態

 附属機関を設置する条例は、個々の附属機関ごとに設けても、自治体に置かれる全ての附属機関を通じて一本の条例で設けても差し支えないとされている*2

 都道府県レベルで、こうしたいわゆる「附属機関設置条例」を設けている例は、28府県あるが*3、次のような場合に附属機関を「附属機関条例」で規定することは現実的ではないだろう。

  • 条例で定める仕組みにおける手続等の中で附属機関を位置付ける必要がある場合(例:アセス条例において附属機関を定める場合、基本条例の中で附属機関を定める場合など)
  • 調査権限等特別な権限を附属機関に持たせる場合(情報公開審議会など)
  • 附属機関の委員に一定の場合に罰則を科することとする場合

 また、自治体の部等の行政組織を定める条例において附属機関を定める例が2県ある*4

*1:成年後見制度の利用の促進に関する法律」第14条第2項など

*2:松本英昭『新版逐条地方自治法(第4次改訂版)』(P457)参照

*3:青森県福島県・栃木県・群馬県・埼玉県・神奈川県・新潟県富山県・石川県・福井県山梨県岐阜県静岡県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県鳥取県島根県岡山県広島県山口県愛媛県・福岡県・長崎県沖縄県

*4:茨城県・千葉県