自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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県民投票条例(その2)

 2019年2月24日に沖縄県で行われた県民投票については、2019年1月25日付け記事「県民投票条例」で取り上げたが、憲法論者による沖縄県の行為を正当化して国の対応を批判する「地方政治におけるレファレンダム~沖縄県民投票の結果を受けて」*1という論文に接したので、これを取り上げておく。

 前掲論文は、地方自治においては、レファレンダム(国民投票住民投票)は可能であるとした上で、次のような結論をとる。

 今回の県民投票で問われたのは、「米軍基地のための埋立て」に対する賛否であったことである。そして、その埋立ては、元知事が国に与えた承認が撤回されている以上、本来は、法的に根拠をもたないものである。

 このようなコンテクストに照らして考えるならば、「埋立て」を拒否するレファレンダムの帰結は、国による地方自治権への「違法な」介入に抗議するという意味が含まれていると解釈するべきだろう。……自由と民主主義を旗印にする憲法体制における政府は、この民意を尊重しないわけにはいかないはずである。国は、即刻、工事を中断するべきである。

 しかし、前掲論文は、「元知事による承認が違法だったとすれば、前知事が、その判断を職権で取り消すことは当然に可能である」として、当該取消しについて国がとった措置を批判するが、何が違法だったかは明確にしていない。「元知事は、そもそも普天間基地の県外移設を公約にして当選した。それが、一転、埋立てを承認してしまったのであるから、その責任たるや相当大きなものがある」という記述があるが、これを違法とする理由と考えているわけではあるまい。

 結局のところ、前掲論文は、地方自治においてはレファレンダムを行うことができ、国においてはその結果を尊重すべきということを述べているだけであり、それは哲学的にはあり得る考え方だとしても、法律論ではない。

*1:『時の法令NO,2071』に掲載