(5) まとめ
私的諮問機関について、その設置自体は違法としても、損害賠償請求等について認めた判例は、高裁レベルでは、平成21年6月4日広島高裁判決に見られる程度である。
損害賠償請求等を認めない理由としては、平成25年11月7日大阪高裁判決及び平成27年6月25日大阪高裁判決では、附属機関の意義の解釈について必ずしも一致をみていないことなどから、故意又は過失により支出がなされたとはいえないというものである。以前の判例では、平成14年1月30日さいたま地裁判決において、支出した経費は各委員が会議に出席して提供した役務の対価として相当であるとして損害がないと判断したものがあるが、その後そうした判断をしているものは見当たらない。
『判例地方自治412号』(P9)では、「附属機関条例主義について厳格な判断がなされて支出の違法性までは認定されている現状で、今後、法律あるいは条例によらずして設置される附属機関への支出が違法であることの認識が難しかったとの理由で、長の故意・過失を否定する裁判例がいつまで続くのかは、全く不明であるといわざるをえません」とあるが、立法的な解決が必要な分野と言えるのではないだろうか。
なお、国においては、大臣の私的諮問機関というようなものが置かれる。これとパラレルに考えるのであれば、例えば自治体の部長の私的諮問機関というような位置付けをすれば、自治体の機関ではないため、とりあえず附属機関性はないように思うが、訴訟リスクを考えた場合、それが適当かどうかは疑問が残るところだろう。
(このシリーズ終わり)