大阪高裁平成29年7月12日判決は、X市が、X市に隣接するA市内の土地及びX市内の土地に跨って所在する車両基地を操業するY社と締結した、同基地の操業に関し地下水の汲上げを行わないことを内容とする環境保全協定が、A市内の土地の区域についても適用があるかどうか争われた事案である。
X市が環境保全協定を締結する根拠はX市の生活環境条例であるが、本判決は、環境保全協定はX市の有する行政上の権限に基づいて締結されたものではなく、あくまでY社が任意で締結に応じたものであり、その適用範囲がX市の条例と同じであると解すべき必然性はないとして、これを肯定した。
環境保全協定の法的性質については、紳士協定説、公法契約説、私法契約説といった争いがあり、私法契約説に立つのであれば、こうした結論もあり得るところであるが*1、たとえ私法的な契約であるとしても、他の自治体の区域に関する事項について締結することができるかは、組織法的には気になるところである。
しかし、裁判所において一つの結論が出されている以上、参考にすべき方法ではあるだろう。
なお、本判決については上告がなされているが、平成30年3月8日、最高裁は上告を受理しない旨の決定を行ったため、本判決は確定している。