自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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審議会の報告書を受け取らないことについて

 自治体の附属機関に相当する国の機関は、いわゆる八条機関と言われている審議会等であるが、令和元年6月3日に公表された金融審議会(以下「審議会」という。)の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」を麻生金融担当大臣が受け取らないとしたことが問題となった。

 この報告書は、平成28年4月19日、麻生大臣が審議会に対して金融庁設置法第7条第1項第1号に基づき行った諮問を受けて作成されたものである。同号の規定は、「内閣総理大臣、長官又は財務大臣の諮問に応じて国内金融に関する制度等の改善に関する事項その他の国内金融等に関する重要事項を調査審議すること」という規定だが、審議会の権限には、当該重要事項に関し、金融庁長官等に意見を述べることもあるため(同項第2号)、審議会の第三者性ということを併せて考えるならば、受け取らないという選択肢は考えがたいところである。あえて政府の対応を正当化する理由を探すのであれば、年金という審議会が本来対象とするものではないことについて審議会が適切な認識をしていないということだろうか。

 ところで、個人的に気になるのは、ワーキング・グループの位置付けである。審議会の組織については、金融庁設置法第7条第3項を受けて金融審議会令が定めている。同令には、分科会(同令第5条)及び部会(同令第6条)についての定めはあるが、その他の審議会の組織に関する規定はない。市場ワーキング・グループは、審議会の会長が設置しているようであるが、同令は、審議会の運営については会長に権限を委任しているが、組織の設置については委任していない(同令第11条)*1

 そうすると、会長が果たしてワーキング・グループを設置できるのかどうか疑義があるところである。ワーキンググループを審議会の会長のいわゆる私的諮問機関と解するのであれば、審議会の運営に関することと言えなくもなさそうではあるが。

 さらに、ワーキング・グループの委員は、審議会の委員ということになるのだろうが、30人という定数(金融審議会令第1条第1項)の範囲内に収まっているのか気になるところである。

*1:金融審議会令第11条は、「この政令に定めるもののほか、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。」という規定である。