自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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「……を含む」(下)

(本記事は、2.11付け記事に引き続き掲載する予定にしていたものですが、失念していたので、ここに掲載するものです。)

 

 次の規定は、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令(以下「政令」という。)」第21条の規定である。

 (権限の委任)

第21条 (略)

2・3 (略)

4 法第55条第1項から第3項まで及び第6項並びに第56条第1項から第3項までの規定による国土交通大臣の権限は、認定プラスチック使用製品製造事業者等、指定調査機関、特定プラスチック使用製品多量提供事業者又は多量排出事業者の事務所、工場、事業場又は倉庫の所在地を管轄する地方整備局長、北海道開発局長、地方運輸局長(国土交通省設置法(平成11年法律第100号)第4条第1項第15号、第18号、第86号、第87号、第92号、第93号及び第128号に掲げる事務並びに同項第86号に掲げる事務に係る同項第19号及び第22号に掲げる事務に係る権限については、運輸監理部長を含む。)又は地方航空局長に委任するものとする。ただし、国土交通大臣が自らその権限を行うことを妨げない。

5・6 (略)

 国土交通省に置かれる運輸監理部は、地方運輸局の所掌事務の一部を分掌させるために置かれている組織であり(国土交通省設置法第36条第1項)、現在は兵庫県を管轄区域とする神戸運輸監理部が唯一置かれている(国土交通省組織令第215条)。そして、運輸監理部の所掌事務は、運輸地方運輸局組織規則第85条第1項に定められている。

 普通は、A組織が分掌する事務をB組織が所掌することとした場合、当該事務についてはAには権限がないことになる。そうすると、「……を含む」とすると、地方運輸局と運輸監理部の両者が権限を行使できるように読めるので*1、上記の括弧書きの部分は、「(当該所在地が運輸監理部の管轄する区域内にあっては、国土交通省設置法……に係る権限については、運輸監理部長)」というようにすべきだと思う。

 ちなみに、政令第21条第6項の規定は、次のとおりであり、福岡財務支局長への権限委任について、そうした書き方をしている。

 法第58条第3項の規定により金融庁長官に委任された権限のうち、法第55条第6項の規定及び法第56条第3項の規定(多量排出事業者に係る部分に限る。)による権限は、多量排出事業者の事務所、工場、事業場又は倉庫の所在地を管轄する財務局長(当該所在地が福岡財務支局の管轄する区域内にある場合にあっては、福岡財務支局長)に委任するものとする。ただし、金融庁長官が自らその権限を行うことを妨げない。

 財務支局は、運輸監理部と同様、福岡財務支局の一つしかなく*2、他の例規においても同様の書き振りとなっている。両者で異なっているのは、神戸運輸監理部の所掌事務は、地方運輸局の所掌事務の一部であるのに対し、福岡財務支局の所掌事務は、金融庁の所掌事務以外の事務については、その管轄区域においては財務局の所掌事務の全てである*3。しかし、その程度の違いで書き振りを異にする理由は、よく分からない。

*1:そのように読まない方法としては、組織関係例規地方運輸局と運輸監理部との間で事務の振り分けがなされているので、それと合わせて読めばどちらか一方の所掌事務になるということなのではないだろうか。

*2:財務省組織令第82条参照

*3:財務省組織規則第182条参照