自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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定義規定(4)

 (3) 定義規定で用いられている用語

 前回の記事「定義規定(3)」で取り上げた「金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律」第2条第5項は、「基本契約書」という用語を定義している。この用語は、同条第6項で定義されている「一括清算」という用語の中で用いられており、このように定義規定で定義されている用語を定義する場合に定義規定の中で行うことがある。

 同様の例として、次の「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)」の定義規定がある。

(定義)

第2条 (略)

2 この法律において「解説番組」とは、テレビジョン放送(放送法第2条第2号の5に規定するテレビジョン放送をいう。以下同じ。)において送られる静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組をいう。

3 この法律において「字幕番組」とは、テレビジョン放送において送られる音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をいう。

4 この法律において「通信・放送身体障害者利用円滑化事業」とは、次に掲げる業務を行う事業であって、身体上の障害のため通信・放送役務を利用するのに支障のある者が当該通信・放送役務を円滑に利用できるようにするためのもので、身体障害者の利便の増進に著しく寄与するものをいう。

(1) 通信・放送役務を提供し、又は開発する業務

(2) 通信・放送役務を提供するための電気通信設備に付随する工作物を設置する業務

(3) 解説番組、字幕番組その他の放送又は有線放送の放送番組を制作する業務

  第2項の「解説番組」という用語と第3項の「字幕番組」という用語は、第4項第3号でしか用いられていない。同条第3号は、これらの用語を使わなくても、次のように書くことも可能だと思う。

(3) 次に掲げる放送番組その他の放送又は有線放送の放送番組を制作する業務

イ テレビジョン放送(放送法第2条第2号の5に規定するテレビジョン放送をいう。以下同じ。)において送られる静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組

ロ テレビジョン放送において送られる音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組

  そうすると、「解説番組」、「字幕番組」という用語を法律の中に書くことが重要だったということも言えるが、一応定義している用語の中で用いられている用語を定義する例として挙げておく。