自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

例規審査事務経験のある地方公務員のブログ。https://twitter.com/hotiak1

2019-01-01から1年間の記事一覧

省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(中)

(1) 改正部分の表記に二重傍線など従来は用いていない符号を用いて新旧対照表を作成する方式 この方式では、次のような改正文が用いられる。 電気通信事業法施行規則及び電気通信事業報告規則の一部を改正する省令(平成30年総務省令第9号) (電気通信事業…

省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(上)

今回から3回に渡り、現在記載しているシリーズを中断して、省令レベルにおける新旧対照表方式について取り上げる。 国において省令レベルの改正方法として新旧対照表方式が用いられていることについては、旧ブログでは2016年6月24日付け記事「省令で新旧対…

附属機関(5)

7 いわゆる私的諮問機関について (1) 附属機関と私的諮問機関との違い 要綱等によりいわゆる私的諮問機関*1が設置されることがあるが、これと附属機関との違いが不明確な面がある。 附属機関と私的諮問機関の形式的な違いは、委員へ支払う報酬の科目が違う…

附属機関(4)

6 附属機関であるか検討を要する機関 (1) 協議会 近年、利害調整等の手法として、法律で「協議会」という名称の機関を設置することが定められることが多くなっている(大橋洋一「道路建設と史跡保護―協議会の機能に関する一考察」『行政法研究第16号』参照…

附属機関(3)

4 自ら自治体の意思を決定・表示する附属機関の設置の可否 自治体の附属機関は諮問機関であるべきで、自ら自治体の意思を決定・表示する附属機関は設置できないという見解があり、むしろ一般的な解釈であるように思われる*1。 法定の附属機関の中には、例え…

附属機関(2)

3 附属機関の設置が条例事項とされていることについて 審議会等の附属機関の設置は、地方自治法第138条の4第3項の規定により条例事項とされている。これに対し、国の審議会等は、かつては全て法律で設置することとされていたのだが、昭和58年の国家行政組…

改元に伴う元号による年表示の取扱い

今回は、現在記載しているシリーズを中断して、改元に伴う元号による年表示の公文書上の取扱いについて触れる。 2019年4月1日、「元号を改める政令(平成31年政令第143号)」が公布され、同年5月1日から元号が「令和」に改められることになったが、それ…

附属機関(1)

今回から10回にわたり、附属機関について取り上げる。旧ブログでは、「自治体の組織」という記事の中で、特に附属機関が条例事項とされている意義を取り上げたが、近年は、要綱設置の会議体が条例設置の附属機関とすべきとして違法とする下級審判決が出され…

条例に根拠のない給与の追認

以前、手当の額を増額する改正で、それを遡及適用している条例を見かけ、いかがかと思ったことがあるが、同じように感じる人はいるようで、裁判で問題となっている事例がある。その結果は、適法とされている。 最高裁判決平成5年5月27日は、条例に基づかず…

自治体の規則(7)

3 全執行機関に共通する事項 自治体の規則は、全執行機関に共通する事項を定めることができるとされている。例えば、長谷川彰一「地方公共団体の規則及び委員会規則その他の規程」松永邦男ほか『自治立法』P246では「地方公共団体の規則は、地方公共団体の…

自治体の規則(6)

2 法令で委任された事項 (1) 財務に関する事項 財務に関する事項は、規則で規定する事項の代表的なものであるが、その根拠規定は、地方自治法施行令第173条の2*1である。 財務に関する事項は、内部的な事項であるとも言えるが、住民に関係する場面もあるの…

自治体の規則(5)

(4) 手続的事項等 ・ 様式、添付書類等 地方分権推進委員会による「法令において地方公共団体の条例、規則等へ委任する場合の基本的考え方」という意見において、「法令に規定されている権利義務規制に関する様式、添付書類、受付窓口等の手続的事項」は、地…

自治体の規則(4)

(3) 補助金の交付 補助金の交付については、通則的な事項は補助金交付規則といった規則で定め、個別の補助金の内容を定める場合には要綱という形式を用いるのが一般的である。通則的な事項が規則で定められているのは、地方自治法施行令第173条の2の規定に…

自治体の規則(3)

(2) 庁舎管理 規則で規定する事項の代表例として庁舎管理が挙げられることがあるが、次のとおり条例で定めるべきという見解もある。 庁舎管理規則……で関係者の人権制限的定めをしていることを、行政内部関係に入る際の合意に基づくところと解してきたのは、…

自衛官募集の協力義務

今回は、現在記載しているシリーズを中断して、自衛隊が自衛官募集のためダイレクトメールを送る目的で市町村に住民基本台帳に基づく氏名等のデータの提供を求めていることに関し、6割以上の市町村から協力を得られていないという安倍首相の国会における答…

自治体の規則(2)

今回から具体的にはどのような事項が規則で定めるべき事項と考えられるか記載していくことにしたい。 1 長の事務に関する事項 (1) 組織関係 ・ 長の内部組織 組織に関する規程は行政規則であるとされることもあるが、組織に関する事項自体は法律事項とされ…

自治体の規則(1)

今回から7回にわたり、自治体の規則について取り上げる。これは、旧ブログで「例規の形式」として記載した記事を中心に長の規則について記載した記事を書き直したものである。 規則の記載事項については、なお明確にはなっておらず、ともすれば規則で定めた…

失効前の行為について失効後の処罰

平成30年6月に公布された「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(平成30年法律第37号)(以下「本法」という。)」は、特定地域内における大学の定員抑制の規定を置き(第13条)、違反した者に対す…

県民投票条例

沖縄県において平成30年10月31日に公布された「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票に不参加を表明する市があることがマスコミを賑わしている。現在は、投票の方法を「賛成」「反対」の二者択一ではなく、「どちら…

はじめに

「はてなダイアリー」における記事をそのまま移行しようかとも思ったのですが、恥ずかしい記事が多々目に付いたので、タイトルも変えて新たに始めることとしました。 内容は、旧ブログとあまり変わらないと思いますが、適宜旧ブログの記事を書き直すこともや…