自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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省令レベルにおける新旧対照表方式の整理(中)

 (1) 改正部分の表記に二重傍線など従来は用いていない符号を用いて新旧対照表を作成する方式

 この方式では、次のような改正文が用いられる。

電気通信事業法施行規則及び電気通信事業報告規則の一部を改正する省令(平成30年総務省令第9号)

 (電気通信事業法施行規則の一部改正)

第1条 電気通信事業法施行規則(昭和60年郵政省令第25号)の一部を次のように改正する。

 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線(下線を含む。以下この条において同じ。)を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重下線を付した規定(以下この条において「対象規定」という。)は、改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。

 この方式は、改正箇所を明示するために傍線(下線)のほか、破線と二重傍線(二重下線)を用いている。磯崎氏のブログでは「内閣法制局が非公式に協力して作成した方式とも言われている」と記載されているが、基本的には内閣法制局が作成した「司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律(新改正方式のイメージサンプル)」と同様である。その内閣法制局作成資料における破線と二重傍線の用い方は、次のとおりである。

  ア 破線

 表の一部や目次の改正など改正部分を「図」として捉えて改める場合に用いる。

  イ 二重傍線

   (ア) 条等を移動する場合

 改正前及び改正後の条名等に二重傍線を引く。

   (イ) 条等の全部改正をする場合

 改正前及び改正後の条名等に二重傍線を引く。この場合、改正後の規定内容に傍線(二重傍線ではない)を引き、改正前の規定内容には何ら傍線等は引かない。通常の新旧対照表のように改正前の部分に傍線を引かないのは、改正前の規定の内容は審査対象としない(法的効力を有しない)という意図と全部改正の場合は改正後の内容しか表記しないという現行の法制執務のルールを考慮したためではないかと思われる。

   (ウ) 条等の追加をする場合

 追加する条名等に二重傍線を引く。この場合、規定内容に傍線(二重傍線ではない)を引く。また、章の追加の場合には、章名の「第○章」の部分のみ二重傍線を引き、その余は全て傍線を引く。なお、条等の削除をする場合は、内閣法制局作成資料には例示されていないが、削除する条名等に二重傍線を引き、その規定内容には傍線等を引かないこととすると思われる。

 

 このように、内閣法制局作成資料に準じた新旧照表の作成方法はやや複雑となる。また、改正する部分には傍線があるといういわば新旧対照表における当然の前提とも反している部分があり、かえって分かりにくい面がある。さらに、破線を用いた場合、人によっては新旧対照表の作成に時間を要することになるのではないかと思われる。

 そこで、二重傍線は用いるが破線は用いないこととしている省令、条の全部改正の場合には、規定内容、改正前の規定も含めて全て二重傍線を引くこととしている省令なども見られるところである。