自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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失効前の行為について失効後の処罰

 平成30年6月に公布された「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(平成30年法律第37号)(以下「本法」という。)」は、特定地域内における大学の定員抑制の規定を置き(第13条)、違反した者に対する勧告・命令の規定を置いている(第14条)。

 これらの規定について、平成40年3月31日限りでその効力を失うこととする失効規定が置かれているが(附則第2条)、この規定に関し立案関係者は、次のように記載している。

失効規定であるため、後述する検討による法改正などが行われない場合には自動的に失効することとなる。なお、本法の失効前になされた行為については、失効後であっても処罰することができると考えられるため、失効に係る経過措置は規定していない(佐藤孝弘「地方大学・地域産業の振興と大学の定員抑制」『時の法令NO.2063』(P37)。

 しかし、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務(第2版)』によると、失効後に処罰するのであれば、「失効前にした行為に対する罰則の適用については従前の例によるという趣旨の規定を、制定の際に、あらかじめ設けておくのが最近の例である」(P140)としている。

 ただ、本法の命令違反に対しては、学校教育法第13条第1項による閉鎖命令などの他法令による措置に委ね、本法自体には罰則を規定していない(前掲論文(P36))。つまり、前掲文の意図するところは、特段の経過規定がなくても、失効前になされた行為について、失効後に現存する規定に基づき命令を行い、その違反に対し処罰することが可能ということなのだろう。