今回は、現在記載しているシリーズを中断して、改元に伴う元号による年表示の公文書上の取扱いについて触れる。
2019年4月1日、「元号を改める政令(平成31年政令第143号)」が公布され、同年5月1日から元号が「令和」に改められることになったが、それに伴う元号による年表示の取扱いについては、国では「改元に伴う元号による年表示の取扱いについて」(平成31年4月1日新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議申合せ)によることとされている。この中で、当該公布の日から同年5月1日までの間において、公文書に元号を用いて改元日以降の年を表示する場合は、「平成」を用いることとしている(同申合せ2(3))。その理由は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成29年法律第63号)」の附則第2条に次の規定があることによると思われる。
(この法律の失効)
第2条 この法律は、この法律の施行の日以前に皇室典範第4条の規定による皇位の継承があったときは、その効力を失う。
(参考)皇室典範(昭和22年法律第3号)
仮に5月1日以前に皇室典範第4条の規定による皇位の継承があった場合には、必ず平成31年政令第143号も無効になるのであればともかく、平成31年政令第143号の制定文を見ると、その根拠はあくまでも元号法第1項であるため、新たに「元号を定める政令」を制定することも考えられるのだが*1、平成31年政令第143号の施行日を改正して対応することも法的には可能なのではないだろうか。
そうすると、平成31年政令第143号の公布の日から5月1日までの間において、「平成」を用いるのではなく、「令和」を用いることも選択肢としてはあり得るし、その方が普通の考え方のような感じもするところである。
ただし、結果的に「令和」の元号が用いられなかったとき場合は、「令和」の元号を全て新しい元号に改める措置が必要になってくるのだろう。