自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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下位例規への経過措置の委任

 次の規定は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「法」という。)」第52条の規定である。

(経過措置)

第52条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 この規定について、化審法規研究会『逐条解説化審法』は、不思議な解説をしている。まず、同書(P891)は、次のように記載する。

 本規定は、化審法に基づく規制の制定又は改廃に際し、合理的な範囲内において、ある程度の猶予期間をおく必要があると考えられるものについては、罰則を含め、所要の経過措置を定めることができることとしたものである。

 そして、その具体例として、法附則第3条や平成15年法律第49号附則第2条の規定を挙げている。しかし、法律の改正等に伴って、当該改正法律に経過措置を定めることができることは当然のことである。

 この規定の趣旨は、よく読めば分かるように、法に基づく政令等の命令を定める場合に当該命令に経過措置を定めることができることとする規定である。例えば、法律に物質の所持を禁止する規定を置き、具体的な物質の定めは命令に委任している場合において、命令で新たに禁止物質を規定するときに、従来所持している当該物質の取扱いを命令で定めることができることとした規定である。

 通常「○○研究会」というと、所管省庁の職員によるものであり、国の立法担当者であれば常識だと思うのだが、この逐条解説の奥書を見ると、そうした職員の手によるものではないようである。