自治立法立案の技法私論~自治体法制執務雑感Ver.2

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閲覧所

 法令には、書類の閲覧について規定が設けられることがある。例えば、次の建設業法の規定である。

   建設業法(昭和24年法律第100号)

(提出書類の閲覧)

第13条 国土交通大臣又は都道府県知事は、政令の定めるところにより、次に掲げる書類又はこれらの写しを公衆の閲覧に供する閲覧所を設けなければならない。

(1) 第5条の許可申請

(2) 第6条第1項に規定する書類(同項第1号から第4号までに掲げる書類であるものに限る。)

(3) 第11条第1項の変更届出書

(4) 第11条第2項に規定する第6条第1項第1号及び第2号に掲げる書類

(5) 第11条第3項に規定する第6条第1項第3号に掲げる書面の記載事項に変更が生じた旨の書面

(6) 前各号に掲げる書類以外の書類で国土交通省令で定めるもの

    建設業法施行令(昭和31年政令第273号)

(閲覧所)

第5条 国土交通大臣又は都道府県知事は、閲覧所を設けた場合においては、当該閲覧所の閲覧規則を定めるとともに、当該閲覧所の場所及び閲覧規則を告示しなければならない。

2 国土交通大臣の設ける閲覧所においては、許可申請書等(法第13条(法第17条において準用する場合を含む。)に規定する書類をいう。次項において同じ。)で国土交通大臣の許可を受けた建設業者に係るものを公衆の閲覧に供しなければならない。

3 都道府県知事の設ける閲覧所においては、当該都道府県知事の許可を受けた建設業者に係る許可申請書等を公衆の閲覧に供しなければならない。

 この規定の趣旨について、建設業法研究会『建設業法解説(改訂12版)』(P146)には、次のように記載されている。

 この閲覧所の設置の目的は、提出書類を公衆の閲覧に供することによって、建設工事の注文者、下請負人等に、当該建設業者の施工能力、施工実績、経営内容等に関する情報を提供し、適切な建設業者の選定の利便等に供しようとするものであり、建設業者に関する情報を持たないことによって、建設業者の選定を誤まる一般公衆等が少なくないと考えられるので、これらの人びとによって、この閲覧制度が広く利用されることが、もっとも望まれるところである。

 しかし、この閲覧所を直接利用する者は、一般公衆よりも企業情報提供を業とする者がほとんどであろうから、規定の趣旨が果たされているのか疑問があるところであるし、IT全盛の時代に閲覧所という発想は古い感じがする。

 また、「閲覧」とされているため、コピーをとることを認めているのか明確ではないが、関係書類に係るデータの一部は既にインターネットで公開されているため、あえて閲覧所という制度を設けなくても、自治体の情報公開制度があれば十分だと思う。

 改善が図られるべき制度の一つであると思う。