2 法令で委任された事項
(1) 財務に関する事項
財務に関する事項は、規則で規定する事項の代表的なものであるが、その根拠規定は、地方自治法施行令第173条の2*1である。
財務に関する事項は、内部的な事項であるとも言えるが、住民に関係する場面もあるので、純粋に内部事項とはいえない。
なお、財務に関する規則は、公営企業を除く全ての執行機関に適用されるのが通常であるが、予算執行権等はもともと長の権限に属するものであるため、長の規則で定めることとしても格別異論はないところだろう。
(2) 漁業調整に関する事項
漁業法は、漁業調整に関する事項を定めることについて、次のとおり、同法第65条で都道府県の規則に委任している。
(漁業調整に関する命令)
第65条 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁業取締りその他漁業調整のため、特定の種類の水産動植物であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものの採捕を目的として営む漁業若しくは特定の漁業の方法であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものにより営む漁業(水産動植物の採捕に係るものに限る。)を禁止し、又はこれらの漁業について、農林水産省令若しくは規則で定めるところにより、農林水産大臣若しくは都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることができる。
2 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁業取締りその他漁業調整のため、次に掲げる事項に関して必要な農林水産省令又は規則を定めることができる。
(1) 水産動植物の採捕又は処理に関する制限又は禁止(前項の規定により漁業を営むことを禁止すること及び農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることを除く。)
(2) 水産動植物若しくはその製品の販売又は所持に関する制限又は禁止
(3) 漁具又は漁船に関する制限又は禁止
(4) 漁業者の数又は資格に関する制限
3 前項の規定による農林水産省令又は規則には、必要な罰則を設けることができる。
4 前項の罰則に規定することができる罰は、農林水産省令にあつては2年以下の懲役、50万円以下の罰金、拘留若しくは科料又はこれらの併科、規則にあつては6月以下の懲役、10万円以下の罰金、拘留若しくは科料又はこれらの併科とする。
5 第2項の規定による農林水産省令又は規則には、犯人が所有し、又は所持する漁獲物、その製品、漁船及び漁具その他水産動植物の採捕の用に供される物の没収並びに犯人が所有していたこれらの物件の全部又は一部を没収することができない場合におけるその価額の追徴に関する規定を設けることができる。
6~8 (略)
地方分権推進委員会意見「法令において地方公共団体の条例、規則等へ委任する場合の基本的考え方」(H12.8.8)では、「法令により、権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合にも、規則等ではなく条例に委任することを原則とする」とされているが、漁業法が規則に委任している理由について、漁業法研究会『最新逐条解説「漁業法」』(P319)は、次のように記載している。
漁業調整のため、あるいは水産資源の保護培養のための制限又は禁止の措置は、いずれも
(1) 全国一律になし得るものであっても、その内容は具体的事情に応じ随時変更することを要し、
(2) また、各都道府県ごとになすべき事項については、その内容は極めて複雑で一律に規定することは困難であり、かつ、具体的事情に応じて随時変更することを要するものが多い
ものであるという性質から、立法技術上、具体的規定を省令又は規則に委任せざるを得ないためである。
漁業調整に関する事項を規則に委任していることについて、須藤陽子『過料と不文の原則』(P134)は、随時変更可能、機動性というメリットがあるが、規則で刑罰を定める理由にはならないと批判している。
(3) 特定事業主行動計画を策定する機関
次世代育成支援対策推進法施行令第2項は、次のとおり特定事業主行動計画を策定する機関の一部を定めることを規則に委任している。
次世代育成支援対策推進法施行令
1 (略)
2 前項に規定するもののほか、法第19条第1項の地方公共団体の機関、その長又はその職員で政令で定めるものは、当該地方公共団体の規則で定めるものとし、それぞれ当該地方公共団体の規則で定める職員についての特定事業主行動計画を策定するものとする。
第19条 国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるもの(以下「特定事業主」という。)は、政令で定めるところにより、行動計画策定指針に即して、特定事業主行動計画(特定事業主が実施する次世代育成支援対策に関する計画をいう。以下この条において同じ。)を策定するものとする。
2~4 (略)
この規定は、規則で全執行機関に共通する事項を定めることとしている例とも言えると思うが、内容は、住民とは直接関係のない内部事項である。